アーティストでもあり俳優でもある高野洸が、対談を通してアートの世界に触れ、表現を学ぶ「お訪ねアトリエ」。今回のゲストは、大河紀さん。ポップさと無機質を織り交ぜ、情緒的な雰囲気を描く現代美術家で、広告ビジュアルやパッケージなど、様々なアートワークも手掛け、今年は、大阪・関西万博のEXPO WORLDs 壁画の一つを担当。国内外で活躍している。
今回、大河さんのアトリエにお邪魔して、制作途中の作品や画材について、気になることをたっぷりと伺いました! ホームページやSNSを通して画像で見るのとは異なる、作品を間近で見て感じる立体感や質感を感じながら、大河さんの作品の繊細さと色の美しさに感激しました。

間近で見る作品に感動
――こちらのアトリエの壁に飾られているのは、制作中の作品ですか?
大河:完成したものと、制作途中のものが混在しています。一番左の絵は、まだ途中ですね。
高野:僕も初めて見る作品です。
大河:最近は、まず絵の具を感覚のままに置いて“勢い”で始め、あとから形を探るやり方をしています。
高野:輪郭線が効いてますね。
大河:そうなんです。これは、こういうのを描くぞっていうラフとか無しの状態で描いています。スプレーに見えるとこも、実はブラシでピピッとやってます。スプレーもたまに使いますが、欲しい色がない時は自分で調合して“ベスト”な色を作ってやっていますね。
高野:見たことのない色が出ると、純粋に嬉しいですよね。
大河:そうですね、色は相当こだわります。
高野:丸とか本当にきれいに描かれていますね! 本当に丸を描くのって難しいですよね。
大河:丸は特に気合いで描いています(笑)。最初は円定規や丸い型でアタリを取って、そこから線を太くしていきます。なぞる時は、すごく集中してなぞっていますね。結局太さは自分で調整しないといけないので、そこはフリーハンドでやっています。最初は、下手でした。
高野:なかなかできないですよね。
大河:いえいえ、いやー、褒めていただけて嬉しいです。
高野:複数の作品を同時進行で制作されているんですか?
大河:はい。結構、私は同時進行で進めるタイプですね。下地や背景の色を先に描いて、フィジカルな塗りをガッと一気にやります。それから、乾かしながら形を見つける時間を取るんです。最初は何が潜んでいるか見えないので、数日置いて、キャンバスを回しながら360度いろんな方向から見て、見えるものを見つけていくイメージです。
ただ、作品によってアプローチは違って、少し前は、ラフがあって進めるやり方でした。偶発的な部分もありますが、比較的“考えて”描いています。最近の方がより偶発性の割合が増えた感じですね。

――高野さんが大河さんの作品と出会ったきっかけは何だったんですか?
高野:僕が初めて拝見したのは、天王洲WHAT CAFEの展示でした。
大河:来てくださって嬉しいです。あの時期は虹やヤシの木にハマってました。展示ごとにモチーフが変わるので、「また違うことやってる」と思われることも多いですね。自分で自分をぶっ壊すタイプです。
高野:立体と平面、異次元感の共存が面白いです。
大河:そう思っていただけて嬉しいです。“有機×無機”“立体感×平面性”のように、そういう組み合わせをテーマとしています。描き方を少しずつ変えながら、常に自分と勝負してる感じです(笑)。
高野:全体で見たときの“違和感のなさ”もすごい。
大河:ありがとうございます。シルバーの面は最後にマスキングでガバッと入れて、背景の派手さと手前の要素のコントラストを狙いました。細かくやると線が弱くなるので、気持ちよく一発で。
高野:とても映えますね。
大河:光の当たり方で画肌が変わるのも楽しいんです。
高野:線は何で描いてるんですか?
大河:ダーマトグラフっていう油性系の色鉛筆がありまして、粉が出にくくて定着が良いんです。ガラスや金属にも描けるので、下書きや細線の“起点”に使います。その上からアクリルで太らせたり濃くしたり。

高野:画材、かなり試してますね。
大河:基本はアクリル絵の具を使っています。メディウム(顔料や他の材料を混ぜ合わせるための素材)とかも使いながらなんですけど、ちょっとしたペンとかも使ったりしてます。やっぱり、いろんな画材がでてきますし、お店に行って試して、気に入ったものをどんどんキープしていってますね。
アクリル絵の具も発色がいいものとか、油絵っぽい質感のものとかいろいろあって、使い分けたりしています。最近のアクリルは本当に進化しているように思います。アクリル絵の具って乾くと痩せていくんですけど、盛りっとした感じが残るものも出てきたりして。高野さんは、何の画材で絵を描かれるんですか?