ラブレターとミルクレープ
店員さんに「ブラン」について尋ねてみる。
層は全て計算されており、バランスを整えるために生地が連続する部分とクリームが連続する部分がある。
クリームは、卵にもこだわっているカスタードクリームとヨーグルト風味の二種類のクリームを使用している、と教えてくださった。
どうりで……と思った。
もっと繊細に味を楽しみたくて、上半分と下半分を分けて食べてみる。
すると、上半分がさっぱりとしており、下の方が濃厚な甘みを主張していた。
まるで大人のラブレターみたいだと思った。
ラブレターとミルクレープ
どこか幼い印象のある二つ。
この二つの“もう一つの顔”を見てしまったような感じがした。
私はラブレターと言うと、便箋の上で思うままに恋心をばらまいて、最後にその心の中から急に露になり恥ずかしがる文字たちを、自分の目から遠ざけるかのように封筒にしまう夜更けの中学生の後ろ姿が浮かぶ。
また、ミルクレープなら、五人家族の母親が五種類のカットケーキを買ってきたとして、一つだけミルクレープがあるとしたら、それは高確率で末っ子にわたるような気がする。
大人のラブレターはきっと、子どもの頃よりも丁寧な気持ちの届け方である。
思うままに恋心をばらまかず、まず序論を書き、次に本題、最後に相手を思いやる締めの言葉を添えると思う。もし私が書くならそうしたい。
そして、五種類のカットケーキの中に「ブラン」があるとしたら、きっと母が食べる。
閉じ込められた、甘美なこだわり
何度も作り直し、計算しつくされた美しい層がまるで小さな文字が敷き詰められた便箋のように見えた。
行が進むごとに気持ちの濃さが変化していく様子も重ねざるを得ない。
層のなかに閉じ込められた幾つもの甘美なこだわりと、整った見た目にすっかり魅了させられてしまった。一度食べたら絶対に何度もこの味を思い出すだろう。
つい情緒的になってしまうスイーツだった。
今回、特別に店内で「ブラン」を試食させていただいたが、通常はオンラインでの販売のみ。
2025年内の販売は終了しており正に入手困難大人気スイーツです。お店のホームページやInstagramにて随時情報が更新されているので、食べてみたいと思った方はぜひそちらでご確認ください!
次回の『平岡海月のあま~い漂流記~お菓子い散文~』は2026年1月上旬です。お楽しみに!!
X:@nc_waniwani
EQUALLY
クレープの開発に没頭したパティシエがつくる「スペシャリティクレープ」
住所:東京都世田谷区豪徳寺1-46-15 豪徳寺レーベル 2F
アクセス:豪徳寺駅から徒歩3分
8:30〜18:00(L.O17:30)火曜、水曜定休(祝日の際は営業)
ミルクレープ「 ブラン 」【BOX入り】 ¥6,804~
Instagram:@equally_creperie



平岡海月