ここいますよ。山形から来た原石が。
ここって確かスカウトのメッカだよね?
竹下通りを歩いてる時にスカウトされて芸能界デビューしたという話を、テレビで俳優さんがよく言っていたな。
ここで過去、自分がジュノンボーイに応募した事を思い出した。
あの時はまあ何かの不備で返信が無かったのだろうけど、ここは直接声をかけられるからすぐデビューなのでは?
仮面ライダーへの意欲が再び湧き始める。
18歳のオレのナルシズムはすでに完成されていて、照れるという概念はもうそこには存在しなかった。
スカウトの皆さん。
ここいますよ。山形から来た原石が。
そこから竹下通りをシャトルランのように往復しまくった。
ちょっとゆっくり歩いたり、逆にちょっと急いでみたり。
様々なパターンで歩いてみたが全く声をかけられない。
声をかけてくるとしたら
「ヘイブラザー服買わない?」と外国人の服屋のキャッチくらいだ。
ただそれも5往復目くらいからは変なやつだと思われたのか、声をかけてこなくなった。
その後も体力測定ならA判定をもらえるくらい往復し続けたが、声はかけられなかった。
今日は全ての芸能事務所のスカウトマンが休みの日なのかもな。
足も限界が来たし、一旦諦めて帰るか。
そう思った瞬間。
「すみません。お兄さん、今何されてるんですか?」
中村獅童さんを細くしたようなスーツの男の人が声をかけてきた。
「え? いや、あの竹下通りで買い物してました」
突然の出来事で、イケメンの立ち振る舞いではないただの芋返しをしてしまった。
「実は私こうゆうものでして」
そこにはプロダクションとその人の名前が書いてあった名刺を渡された。
「業界に興味はありませんか?」
嘘だろ! マジかよ! きたぜ! 来たぜ! うっひょう! やっぱりオレってカッコいいんだ!
スカウトマンも目光っちまうよな! 原石だよな!
心の中でパレードをしながら、ここは冷静に返答しなければと胸を落ち着かす。
「まぁ、あるっちゃありますね」
完璧だ。良い感じのスカし具合だ。
程よい興味で、クールで良いだろう。
「それではもし良かったら、この名刺に乗ってる私のメールアドレスにご連絡頂ければ、詳しいお話を事務所でさせてもらいます」
とテンプレの様に喋って、スタスタといなくなってしまった。
スカウトってこんなあっさりしてるのか。
流石芸能界だぜ。
そこから名前や年齢などメールでやり取りをして、翌日六本木の事務所に行って話をする事になった。
初めての六本木にビビりながら古い雑居ビルの前に着いた。
ここが芸能事務所なのか。なんか意外と豪華じゃないんだな。
ここから芸能界デビューか。
仮面ライダーのオーディションに受からなくては。
期待に夢を膨らませて扉を開けると、8畳程の1LDKの部屋に壁一面にずらっとセクシービデオの表紙がプリントアウトされたポスターが貼られていた。
ん!?
なんでこんなピンクな入り口なんだ?
社長の趣味か?
いやまさか、、、
昨日スカウトしてくれた中村獅童風の男に席に案内されて説明を受けると、どうやらそこはセクシー系のDVDや映画を作ってる会社だった。
嘘だろ。
確かにオレはセクシーだけどさ、、
オレが変身したいのは下半身だけじゃなくて、全身なんだよ。
なんとなく話しを聞き流してグイグイと契約書にサインをさせられそうだったので、強引にちょっと考えますと言いながら外に飛び出た。
マジかよ。
また仮面ライダーの道には届かなかった。
もうオレは大人しくテレビの裏方になるしかない。
その日から17年が経った今、再びこれを書きながら仮面ライダーになりたいとまた沸々と意欲が湧き始めた。
すがちゃん最高No.1を変身させて下さい。
次回、反省第16回は5月20日(水)更新予定です。お楽しみに!!


すがちゃん最高No.1