ブロディ乱入も、冷めやらぬ両者の熱気!
「あの鶴龍対決第1章では普段はやらないジャーマンとか、ジャンボより先にジャンピング・ニーをやったりしたけど、たぶん、“今までと同じ戦いをやってたら、ジャンボ鶴田を突破できない”“意外性で突破口を開くしかない”ってところだったと思うね。ジャンボは同じパターンで自分のペースに入っちゃうと、プロレスを淡々とやるほうだから“そうはさせまい!”と俺は手を変え、品を変えてジャンボに向かっていったよ。俺がジャンピング・ニーをやったら、怒ってニーパットを外して真正面から顔面に膝をぶち込むニーで逆襲してきたし、戦い甲斐があった。俺の得意としていた卍固めも仕掛けてきたから“天龍が使える技は、俺は淡々とやれるんだよ”っていうのをジャンボが見せたかった試合だったかもしれないね」とは、33年後の2020年の天龍の述懐である。
鶴龍対決の第2章は、わずか36日後の10・6日本武道館で早くも実現した。日本武道館2回連続でメイン……馬場は全日本の命運をこのふたりに懸けていたのだ。
この試合は鶴田のほうがスタートから荒っぽく突っ掛けた。ロックアップからロープ際でエルボーバット、右の張り手からロープに振ってジャンピング・ニー、天龍が場外にエスケープすれば、それを追って鉄柱、場外フェンスに叩きつける。リングに戻ると、天龍は鶴田の動きを封じて、試合をリセットするためにグラウンドに持ち込み、5分すぎまで執拗なヘッドロック攻撃だ。
それでも鶴田は止まらない。ジャンピング・パイルドライバー、延髄斬り、ランニング・ネックブリーカー、ネックブリーカー2連発と鶴龍対決第1章と同じく大技攻勢に出た。天龍もラリアットで鶴田の巨体をなぎ倒すと、コーナー最上段から背面式ダイビング・エルボードロップ、ジャーマン・スープレックスで反撃する。
17分すぎ、前回と同じようなシーンが生まれた。場外戦から先にリングに戻った天龍がエプロンに上がってきた鶴田に延髄斬り。そしてロープに走ると、今回はラリアットではなく頭から突っ込むような猛タックル! 鶴田がこれをかわしたから、天龍は頭から場外に転落だ。リングに戻った鶴田はエプロンに上がってきた天龍にジャンピング・ニー。エプロンの天龍は必死に左腕を出してラリアットーージャンピング・ニーとラリアットの相打ちだ。
この攻防の勢いで鶴田は場外に転落。逆に天龍はリングに転がり込む形になったが、天龍の場外カウント7を数えていた和田は、鶴田が天龍と入れ替わりに場外に落ちてもそのままカウントを続行。10を数えて鶴田のリングアウト負けを宣告しようとすると、鶴田のセコンドのマイティ井上が猛抗議した。
これが受け入れられ、試合続行になったものの、鶴田は完全にエキサイト。天龍を鉄柱に叩きつけて流血に追い込み、リングに戻るとコーナーに詰めてパンチばかりか珍しくヘッドバットも乱打。制止に入る和田をボディスラムで叩きつけてしまい、反則負けのゴングが鳴り、日本武道館は騒然となった。
そこに87年4月に新日本に移籍し、その後は新日本とのトラブルで日本マット追放になったものの、この10月に馬場の恩赦で2年7か月ぶりに全日本にUターンしてきたブルーザー・ブロディが乱入してきた。鶴田をゴリラスラムで叩きつけ、ギロチンドロップを投下する暴挙。鶴田はバックドロップで撃退したが、鶴龍対決第2章の余韻はかき消されてしまったのである。
「初めは純粋な試合をしようと思ったけど、途中で一度、リングアウト負けにさせられてカーッとなっちゃったね。負けたとは思ってないよ。むしろ勝ったと思ってる。最後は天龍をぶっ潰しに行ったんだから」<鶴田>
「ジャンボの気合は凄かった。反則の裁定は仕方ないけど、ジャンボがあそこまで来たのに納得しているし、あれがある限り、ジャンボ鶴田は捨てたもんじゃないよ」<天龍>
鶴田、天龍のお互いのボルテージが落ちていないのが救いだった。なお、87年プロレス大賞の年間最高試合賞には、8月の鶴龍対決第1章が選出された。かくして、“鶴龍対決〟はここからさらにその過激さを増していくのである。