お金に関する悩みで、もっともポピュラーなのが「貯蓄がない」だと思います。世間一般の貯蓄状況について調べてみると1世帯あたりの平均貯蓄額は1820万円、さらに実態に近い中央値を調べると1064万円となっています(総務省「家計調査報告」2017年)。一般的には年齢が高くなるほど貯蓄額も増えやすくなるものですので、証券会社でアナリストとして働く大槻奈那氏によると、資産形成のイメージとして、40歳までに500万円、40代で1000万円を目安に考えるとよいとしています。そのあたりの実情を深堀りしてみよう。

※本記事は、大槻奈那:著『1000円からできるお金のふやし方』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

2人に1人は貯蓄がない日本社会

金融資産について聞いた調査(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査/単身世帯調査」2016年)によると、金融資産が「ない」と答えた人(世帯)の割合は48.1%となりました。金融資産とは、運用や将来のために貯めている資産のことです。

つまり、手元にいくらか現金や預金があったとしても、月々もらう給料がそっくりそのまま生活費などに消えていたり、ほかに保険や有価証券(株、再建、投資信託など)がなければ、金融資産がない状態です。

数値を見てわかる通り、世の中の半分近くの世帯が、金融資産がない状態で暮らしています。また、その割合は若い人ほど多く20代では59.3%、30代で47.3%の人が金融資産を持っていません。

このようなデータを見る限り、現状として金融資産がなかったとしても、過度に不安になったり焦ったりする必要はないといえるでしょう。2人に1人は金融資産がないわけですから、自分だけが遅れているわけではないのです。

20代で貯蓄がある人は資産形成の能力が高い

「貯蓄がない」という悩みは「収入が少ない」ことと「支出が多い」ことが原因です。では、収入・支出の平均データはどうなっているのでしょうか。

年齢別の平均収入(男女合計)を見てみると、20代の年収は250~350万円、30代が400万円台前半、40代が400万円台後半、50代が500万円前後となっています(国税庁「民間給与実態統計調査」2017年)。仮に、いまの自分の給料が平均程度なのであれば、貯蓄がない原因は、収入よりも支出が多いことなのかもしれません。

では、支出の平均はどうなっているのでしょうか。月あたりの平均支出を見てみると、単身世帯の平均支出は16万円ほど。年齢別でみると、35歳未満が月15万円、35~59歳が18.3万円です。(総務省「家計調査報告」2017年)。もちろん、住む場所によって支出額は変わり、家賃や物価が高い東京など都市部は支出が増えやすくなります。ただ、目安としては、独身の人はだいたい月20万円くらい(以内)でやりくりしているといえるでしょう。

前述した平均収入のデータを合わせると、収入が250万円前後の20代では貯蓄するのが難しく、収入が年収300万円を超えたあたりから徐々に貯蓄できるようになります。言い方を換えると、20代前半でしっかりと貯蓄できている人は、支出のコントロールがうまく、資産形成の能力が高いということです。