今シーズンよりシアトル・マリナーズ所属となったメジャーリーガー・平野佳寿投手が、自身初となる著書『地味を笑うな』(小社刊)を5月9日に出版。そんな平野投手が、出版に至る経緯や、本に込めた想いを寄せてくれました。
なぜ「地味な」僕が本を出すことになったのか?
世界中が大変な状況下ですが、皆さん、いかがお過ごしですか? 僕は自宅で工夫しながらトレーニングを続けています。
今日は皆さんにお知らせがあります。この度、ワニブックスさんから本を出版させていただくことになりました。その名も『地味を笑うな』。カバーはド派手ですが(笑)。
それは、僕に「本を書いてほしいという変わったオファー」から始まりました。最初は、正直なところ、まったくピンと来ませんでした。野球人の本といえば、王貞治さんやイチローさん、松井秀喜さんのような「偉人」について作家さんが書いたものだとか、野村克也さんのご著書のような野球理論の本とか、監督としてチームを優勝に導いた方のマネジメント本とか、とにかく、自分とは縁のない世界のことだと思っていたからです。
そもそも僕はSNSを使った情報発信ですらまともにやっていない。インスタもマネジメント担当のマネージャーさんに急かされて更新するぐらい。自分の身に起きたことや、そのときの思いなどは、ほとんど伝えたことがないと言っていい。だから、それを知りたいという人もいないのではないか、と感じました。
まったくイメージが湧かないまま、2019年シーズン終了後、最初の打ち合わせの席に向かうと、担当編集者がきまりわるそうにしながら詳細な企画書を渡してくれました。
「いや、タイトル候補であり、侍ジャパンのメンバーとしてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を経験され、誰もが憧れるメジャーリーグで大活躍されている、そんな平野投手に対して使う言葉でないのは、重々わかっているのですが……」
パッと見た瞬間、目に飛び込んで来たのは次のようなフレーズでした。
地味を笑うな!
地味を恥じるな!
地味を誇れ!
そう、その企画書に書いてある本のテーマは「地味」。そのときの編集者の表情があまりにも「申し訳ない!」という感じだったので、逆におかしくなってしまいました。僕は別に怒りもしなければ、悲しみもしない。なるほどなあ……と納得し、むしろ愉快な気持ちでした。なぜなら僕は、自分が地味であることを自覚しているからです。