地味であることの素晴らしさを伝えたい

早いもので、2020年シーズンで日米通算プロ入り15年目になります。中学までは軟式で、高校時代は(甲子園のマウンドには立ったけれど)エースではなかった。大学時代は全国区とはいえない関西六大学野球が舞台だったし、プロ入り先は阪神タイガースの陰に隠れがちなパ・リーグのオリックス・バファローズ。

プロ入り直後は先発投手でしたが、ケガや病気もあって2010年からは中継ぎに転向。8年目にクローザーとして起用されることになりましたが、それより前の7年間は「エース」と呼ばれることも「守護神」と呼ばれることもありませんでした。

そしてMLBで入団したのはアリゾナ・ダイヤモンドバックス。過去に日本人で所属したのは斎藤隆さんただひとり。多くの日本人にとってはなじみのないチームでしょう。

もちろんこれだけ長くプロ野球選手をやっていれば、目立った出来事も多少はあるかもしれません。しかし、こうして自分の経歴をかえりみると、我ながら本当に地味だと思います。でも、僕は自分のキャリアも言動も地味であることを自覚していて、しかもそれをけっこう肯定的にとらえています。

ところが一般的には、地味であることを否定的にとらえる傾向があるように思います

この本の目的は、僕のこれまでの野球人生において、その節目節目にどのようなことがあり、なにを考えて、どう行動してきたかを知ってもらうことで、「地味」であることの素晴らしさを多くの人に伝えることです。

多くの人にとってその具体的な事例が参考になるはずですし、地味な自分に劣等感を持っている人にとっては、勇気と自信を与えるバイブルになる――と、出版社からの企画書には書いていました。そうであるのならば、たしかに意義があるかもしれません。それでも、正直なところ僕の野球人生を振り返ったところで、そんなパワーがあるものになるだろうか……と疑問に思ったのですが、編集者が「そこは心配しなくても大丈夫です」と強く背中を押してくれました。

▲自主トレ中も黙々と、地道にトレーニングに取り組む姿が印象的だった

あまり自信はないのですが、僕のモットーは「求められたらやりとげるのがプロ」。求めてくれるのであれば……こうして僕は、生まれてはじめての本を出すことになったのです。

この本の執筆にあたり、僕の小学校時代からの野球人生を振り返りながら、僕の考えや思いを1冊にまとめさせていただきました。アスリートの方にはもちろん、仕事している方々、そして主婦や学生の皆さんにも参考にしていただける内容になっていると思います。

イラストレーターの横山英史さんが描いてくれた、1ページ目の僕がマリナーズのユニフォームをまとったイラストにもぜひご注目ください。

今はこういう状況下ですので、書店が空いていない地域にお住いの方もいると思います。実際、アメリカに住んでいる僕も完成した本は手にできていませんが、幸い、日本ではAmazonで注文を受け付けています。

野球がない今だからこそ読んでいただけると嬉しいです。