日本各地にあったサッカーへの熱と愛
――1年かけて各地に赴き、取材されたと聞きましたが、取材時の苦労などあれば教えてください。
平畠 僕は、取材についてはまったく苦労とかはなかったですね。とにかくサッカーの話をしていると楽しいので。だから、行く先々でお話を聞いているとスイッチが入っちゃって、いつも取材時間を大幅にオーバーしてしまいました(笑)。でも、皆さん最後まで付き合ってくださって……。そういう優しい方々のおかげで、この本が出来上がりました。
――その長く濃い取材から厳選されたお話が、この一冊に詰まっているわけですね!
平畠 そうですね! そう自信を持って言える一冊になっています。ただ、原稿の執筆作業はめちゃくちゃ大変でした。あれも書きたいこれも書きたいって思ってしまって……。取材が終わって家に着いてからいつも反省しています。お聞きした全部の話を載せようと思ったら、電話帳くらいの厚さになってしまう(笑)。いい話を聞けたのに申し訳ないと思いながらも、「本に載せられなかったあの話、知ってるのは俺だけやな……」ってちょっとしたお得感を味わったり(笑)。そんなことも考えつつ、葛藤しながら選びましたね。
――絞るのは難しいと思うのですが、印象に残ったお話をお聞かせください。
平畠 うーん、本当にみんな印象的な話だったから迷うなぁ……。あっ、レノファ山口の取材の時に、「みんなのレノファ」という番組を作っているプロデューサーとアナウンサーの方にお話が聞けたんですけど、クラブに対する想いがすごいなと感じました。こんなこと言っちゃいけないかもしれないですが、テレビ局の人なので、サッカークラブが盛り上がろうと仕事的には関係ないと思うんですね。でも、この人たちは「番組を作らないといけないからレノファを取り上げる」ではなく、「レノファをもっと盛り上げたい!」っていうスタンスで番組を作っていて、ものすごい“レノファ愛”を感じられました。僕も、テレビ番組に出させていただくことがあるんですけど、この人たちくらい番組を作ることに対して情熱を持ってやらないかんなと改めて気付かされました。
――取材に行かれたその先々の土地で感じたことはありますか?
平畠 僕が取材に行ったのは、基本的に試合がない平日なんですよ。試合がある日って、その街に何千、何万のファン・サポーターが集まって、“熱”っていうものがダイレクトに伝わってくるんですね。そういう意味で、平日ってどんな雰囲気なんやろと最初は思っていました。でも、実際に現地に足を運んで街を散歩していると、試合のない日でも、クラブのポスターやのぼり旗が掲げられていたんですね。最初は10チームで始まったJリーグが、いまや50を超えるクラブ数になって、盛り上がりを見せています。まだサッカークラブがない地域もありますが、日本全国にも徐々にサッカーが染み込んでいっているんだなぁと感じられたことが、今回の取材で凄く嬉しかったことですね。