19世紀ドイツはクラシック音楽の黄金時代

19世紀から20世紀はじめまでのドイツは、クラシック音楽帝国というべき黄金時代だ。重厚で情熱的で嵐のような名曲が次々と生まれたが、その頂点に立ったのはリヒャルト・ワーグナーの楽劇である。この帝国を滅ぼしたヒトラーに好まれたのは皮肉だが。

シューベルトは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの在世中のウィーンで活躍し、美しい歌曲を多く作曲した。『菩提樹』を含む歌曲集『冬の旅』は、その最高峰に位置する。交響曲は天国的な長さの『第7番ハ長調』も魅力だが、人気は『未完成交響曲』だ。室内楽では『ピアノ五重奏曲“鱒(ます)”』。

ハンブルクで生まれ、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウスのオーケストラを育てたフェリックス・メンデルスゾーンは、均整の取れた美しい響きの音楽を書いた。『交響曲第4番“イタリア”』『ヴァイオリン協奏曲ホ短調』を取る。ピアノのための『無言歌』『結婚行進曲』で知られる『真夏の夜の夢』、交響詩『フィンガルの洞窟』などもある。

ロマン主義の旗頭ともいえるロベルト・シューマンは、みずみずしい情感をピアノ曲を中心に表現した。『トロイメライ』を含む『子供の情景』、ピアノ協奏曲、歌曲集『女の愛と生涯』など。

そのシューマンに見いだされたのがヨハネス・ブラームスで、古典的なたたずまいのなかで、ロマン派的な情念を燃え上がらせた。4曲の交響曲はいずれもすばらしいが、最も充実感があるのは『第1番』、最後のコーダでは聴衆が終わる前からスタンディングオベーションを贈ることもある『第2番』を選ぼう。

協奏曲はヴァイオリンもいいが、イタリアの印象をまとめた『ピアノ協奏曲第2番』。ピアノ小品も『間奏曲第2番』とか『2つのラプソディ』とかがすばらしい。声楽曲では『ドイツ・レクイエム』。

▲19世紀ドイツはクラシック音楽の黄金時代 イメージ:PIXTA

それにさらに、グスタフ・マーラーとアントン・ブルックナーという交響曲作家が続いた。

マーラーは交響曲を1~9番と『大地の歌』、それに未完の第10番を書いた。好みの問題だが『第1番“巨人”』『第2番“復活”』を選んでおく。ブルックナーは最も長大な『第8番』だ。それから『美しき青きドナウ』などウィンナーワルツも忘れてはいけない。

オペラも隆盛で『魔弾の射手』のカール・マリア・フォン・ウェーバー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウスなどが出た。ワーグナーの序曲、前奏曲は独立した曲としても人気。『ニュルンベルクのマイスタージンガー』などを含む序曲集は魅力的だ。

シュトラウスは『ドンファン』『ツァラトゥストラはこう語った』『英雄の生涯』など交響詩も書いている。12音階音楽に貢献した新ウィーン学派では、アルノルト・シェーンベルクの『ペレアスとメリザンド』を挙げておく。

近年のものではカール・オルフの『カルミナブラーナ』がコマーシャルなどにも使われて人気。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。