この春から体を鍛え直したい貴方に贈る“読む筋トレ”。アメリカをはじめとする世界の最新トレーニング事情から、筋肉を増やす食事法まで。ここでは、UFC世界チャンピオンマックス・ホロウェイをクローズアップ。その筋肉だけではない真の強さとは?

試合に負けてもアフターパーティに出る

試合後、僕たちは荷物を抱え、UFCが用意してくれたチームマックス専用の黒塗りのバスに無言で乗り込みました。そして、ラスベガスのストリップ(地名)のど真ん中にある試合会場を、深夜12時頃後にしました。

試合に勝っても負けてもマックスは、カジノホテルで開かれる盛大なアフターパーティのスペシャルゲストとして、参加することになっていました。会場となるカジノホテルの中にある数千人も入る大きなクラブには、マックスの他にもハリウッドスターや有名ミュージシャンらが招待されています。

▲マックス・ホロウェイ 

マックスはパーティ会場に契約の時間までいなければならず、タイトルマッチの後も仕事が待っています。これが、アメリカのビジネス成功者の仕事量なのかと、僕は正直驚きました。

ちなみにUFCファイターで、カジノホテルからアフターパーティに呼ばれるのは、マックス・ホロウェイとコナ・マクレガーくらいだそうです。つまり、マックスはアメリカにおいて、絶大な人気と強い影響力を持っているということです。

試合に向けて30㎏近い減量をして、タイトルマッチの5分5ラウンドを全力で戦い抜き、その結果チャンピオンベルトを奪われ、激闘のダメージで歩けなくなった両脚で、そのままアフターパーティへ向かうマックス。心身共に限りなく大きなダメージを受けているのは明白です。

試合に負けてアフターパーティだなんて、僕にはとても真似できないと心から思いました。しかし、マックスは文句ひとつ言わず、マネージャーと二人で僕たちより一足先にパーティ会場に向かいました。

僕はサポートだけで試合をしていないのに、ひどく疲れていました。一刻も早くベッドで寝たいと心から思っていました。しかし、僕たちコーチ陣もパーティに参加できる服に着替え、マックスがいるカジノホテルのクラブに向かいました。会場に着くとVIPルームに案内され、僕たちはマックスと合流しました。

ザ・チェインスモーカーズがお客さんを盛り上げ、熱狂に包まれている会場の片隅にあったソファで、マックスのマネージャーは負けたことが悔しくて一人男泣きしていました。それに気がついたマックスは、マネージャーを慰めに行きます。マックスは一見ぶっきらぼうに見えますが、自分がどんなに疲れている時でも気遣いができる男です。そして、仲間にはとことん優しい男なのです。

マックスは、ファンの女性たちに声をかけられ、紳士に対応していました。そして契約時間の午前3時になり、マックスと僕たちはパーティ会場を後にしました。 

そんなマックスの姿を見て僕は「日々のトレーニングで僕たちはメンタルが強化されている。チームマックスは新しい歴史の1ページを作るチャンスを手に入れたのだ」と考えるようになりました。 

今回の「負け」は、今までよりもっともっと大きくなるための「負け」なのだと、心から信じています。

▲日々のトレーニングは肉体だけでなくメンタルをも強化する イメージ:PIXTA

※本記事は、井谷武:著『史上最高のパフォーマンスを引き出す 知性を鍛える究極の筋トレ(マガジンハウス:刊)』より一部抜粋編集したものです。