「全部つぶれちゃえば、必ず新しい文化が起こる」
一方で平野さんは、これを変化の機会であるとも考えている。
「時代は変わる、変わって新しい時代になる。前の枠組みは全部ぶっ壊れて、極端にいえば、全部つぶれちゃえばいいんですよ。そうすれば必ず新しい文化が起こるから。それに期待したいんです」
変化を迫られるロフトは、6月だけで約200本のライブ配信を行った。
「有料の視聴者が数十人しかいないってのは、しょっちゅうです。でも今はとにかく攻めようと。社長がよく言うんだけど、ライブハウスのなかで、うちが一番配信のノウハウを持っているはずです」
こうした姿勢が、他のライブハウスを刺激することを期待している。
「うちがYahoo!特集に取材されたことで、全国のライブハウス関係者が見てくれたはず。これからは『どうやってロフトに準じようか』というライブハウスが出てくる。僕が『うちはこういう風に将来を考えています』と発言することが、その指針になる気がする。違う方法でもいいから、『うちもやってやろう』ってライブハウスのみんなが思ってくれたら、成功なんじゃないかな」
〇Yahoo!での特集記事
では逆に、創業以来変わっていないものは? 平野さんにぶつけてみた。
「演者とのコミュニケーションを重視するってこと。僕はもう現役を退いているから何とも言えないんだけど、ライブハウスっていうのは要するに体験なんだ。ツバの飛ぶ範囲で丁々発止しながらライブをみて、今日のギターはなんなんだ。ひょっとしたら朝、奥さんと喧嘩したんじゃないかとか、そういう風に、顔を見て、醸し出す音、アンサンブルを聴いて、帰りの居酒屋で、周りの人と今日の演奏はどうだった、あれはなんだっていう論争をして初めて『ライブ』だと思うんです」
最後の最後に、現状に「もどかしさ」を抱く平野さんの本音が、かいま見えた気がした。