コロナの来たる第二波に備えて、国と自治体の成果を検証する必要がある。政治経済評論家の八幡和郎氏が、世界が日本政府をどう評価しているのかを確認し、日本人がリードする新しい生活様式を提言していく。

※本記事は、八幡和郎著『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

世界が驚く安倍政権と日本の「奇妙な勝利」

世界を震撼させた新型コロナウイルス騒動も、落ち着き気味となった先進国では振り返りの時期となりました。安倍政権の対応は、華々しくはないものの中庸を得たもので、都市ロックダウンをせずに済んだし、人口当たりの死者は最低水準だから絶賛に値するはずの数字です。

米外交誌『フォーリン・ポリシー(電子版)』は5月14日に、日本の新型コロナウイルス対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界死亡率えたつであり「奇妙勝利」えました

日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保も中途半端、ウイルス検査率も低いものの「死者数が奇跡的に少ない」「結果は敬服すべきもの」「単に幸運だったのか、政策がよかったのかはわからない」としています。

▲ソーシャルディスタンス(社会的距離) イメージ:PIXTA

これに対して、中国メディア『騰訊網』(テンセント系のWEBサイト)は「日本はアメリカの批判に面しても、自信をもって独自の対策を推し進め、勝利を得た」のであり「これは自信の勝利だ」と称賛しています。

2年分に相当するデジタル変革が2カ月で!

経済産業省OBの朝比奈一郎氏(青山社中社長)は、

  1. 検査数と医療機関や隔離場所を調整して医療崩壊を避けた
  2. 要請と自粛だけで対処した
  3. 「命も経済も」とロックダウンを避けたのはよいバランス感覚であり、政府と国民、医療機関等が一体となった「協力」「曖昧(よくいえば中庸)」戦略が機能し「非常によく振舞った」

といった評価をしていますが、妥当なところです。

しかし、流行が収まったとしても、ポスト新型コロナの世界は、数カ月前の世界と同じではありません。元の生活や仕事に戻れないし、戻るべきでもありません。

一番顕著なのは、在宅勤務などリモートワークの進展で、企業や個人もいやおうなしに新しい仕事の仕方を覚えたことでしょう。

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは「2年分に相当するデジタル変革が、2カ月で起こるのを見た」といいますが、同社は2020年度第3四半期に同じ季節では過去最大の売上高を上げました。

これを聞いて「首都圏偏重、IT情弱、キャッシュレス、働き方改革など喫緊の課題が、この2カ月で一気に片付こうとしている。壮大な陰謀説が出てくるのも、そういう意味ではわからないではない」とナデラ氏を皮肉ったのは、グルメ評論家としても知られる柏原光太郎氏(文藝春秋)です。

新しい世界に順応し、チャンスと捉えられる個人・企業・国は飛躍できるし、後ろ向きにしか捉えられなければ、新しい時代は苦難となるでしょう。ここでは前向きの希望を中心に考えていきたいと思います。