「健康増進法」の改正により、多数の利用者がいる施設たとえば旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店などの施設において、2020年4月1日より屋内原則禁煙となります。もちろんパチンコホールも例外ではなく、喫煙者のユーザーが多いパチンコ業界は対策に追われています。そんな改正に先駆けて、2012年より「全席禁煙」を実施。さらに多くのお客さんでにぎわうのが『マルハンなんば新館』です。
なぜ、客離れという〝リスク〟を恐れず「全席禁煙」のホールを作ったのか? そしてなぜ、「全席禁煙」はユーザーから受け入れられたのか? そのチャレンジについて、『マルハンなんば新館』店長・石橋美紀彦さんに詳しく聞いてきました!
3割のお客様は『マルハンなんば新館』を選んでいただけるという自信
――以前に私が大阪に出張した際、たまたま『マルハンなんば新館』(大阪府大阪市中央区難波3-1-34)に入店しました。その時、ホール内のとても綺麗な空気に驚くとともに、そのチャレンジに感動しました。東京でも「分煙」こそは増えてきましたが、あえて「全席禁煙」に踏み込んだ経緯をお聞かせください。
石橋店長 このホールは2012年3月7日にオープンしまして、今年で8年目を迎えました。私が着任したのは3年半前ですので、オープンした時の状況は前任の店長などから私が聞いた話になります。『マルハンなんば新館』は大阪ミナミの難波・千日前地区という、数多くのパチンコ店が点在する大激戦区に位置します。
歩いて行ける範囲に1000台クラスのお店がこれだけあるというエリアは全国的に見てもかなり珍しいものがあります。すぐ近くにある『マルハンなんば本館』に加えてなんば新館をオープンさせるにあたって、将来を見据えて〝違ったもの〟を提供していく、いろんなものにチャレンジしていく必要があったのが「全席禁煙」のスタートだったと聞いております。
――同じマルハングループの中でも差別化を打ち出した画期的な試みだったのですね。
石橋店長 はい。世の中的に、喫煙率が下がっていく、分煙化が進んでいく中で、「パチンコ店=煙モクモク」という今までのパチンコ店のイメージや、「通例」「慣例」とは違う「全席禁煙」を「新館」のコンセプトにしたということです。
――ただ、「全席禁煙」にすることで〝客離れ〟のリスクもあったかと思います。
石橋店長 新館オープン当時、「タバコは吸わないけれどパチンコやスロットが好きという方が3割はいる」という分析がマルハンにはありました。8年前、楽園さんはまだオープン前でしたが、キョーイチさんはすでにオープンしていて、千日前の商圏内に7000~8000台のパチンコ・パチスロ機がある……つまり、毎日数千人のお客様がこのエリアに遊びに来てくださるという状況でした。ですから、「そのうちの3割のお客様は『マルハンなんば新館』を選んでいただけるという自信がある」と考えていたそうです。
――私はタバコを吸わないのでまさにその3割にあたる人間です。
石橋店長 私も年に200回ほど遊びに行くディープなユーザーですが(笑)、一回もタバコを吸ったことがない人間です。ですから〝3割のお客さんは『マルハンなんば新館を選んでいただける〟と考えると確かにそのとおりだな、と。
私も特にパチスロが大好きで、タバコの煙が苦手な人間ですから、その3割のお客様には絶対的な支持をいただける勝算はよく理解できます。もちろん喫煙者の方々による〝客離れ〟の怖さはあったでしょうし、8年前のオープンの時点では「全席禁煙」というホールはなかったと思いますので、リスクを伴うチャレンジではあったと思います。しかし、決して「むやみやたら」ということではなく、計算の裏付けがあったと聞いています。
――一方で、愛煙家の方から「ここはタバコが吸えないのか」などのクレームはなかったのでしょうか?
石橋店長 オープン当時にお客様からのクレームや、大きなトラブルがあったという話は聞いていません。もちろん現在でも初めて来られたお客様が、(全席禁煙と知らずに)タバコを吸われてしまってお声掛けさせていただいたりということは週に何回かという頻度であります。
もちろんグランドオープン初日などは、多少の混乱もあったとは思うのですが、お客様への浸透は早かったのでは……社内ではそういう認識でした。また、私がこの店に赴任してからの3年半で、お客様から「席で喫煙させてほしい」といった要望が出たことは一度もありません。
――それは意外でした。ユーザーも「全席禁煙」を求めていた結果ですね。
石橋店長 ただ、ホール近辺の商店街も禁煙になっていますので、開店を待たれている間にお店の前でタバコを吸われているお客様には、禁煙のご協力をお願いすることはあります。あとは最近ですと、「電子タバコもダメなの?」といったお尋ねはありますが、「タバコに関するトラブル」というようなことは特にありません。
ちなみに電子タバコもお席ではお断りしております。同じマルハンでも、「電子タバコだけはOK」という取り組みをしているお店もあるとは聞いていますが、当店については、「Air First」「きれいな空気で楽しい時間を♪」をコンセプトとしていますので、電子タバコも含めてお断りさせていただいております。
――きれいな空気づくりを徹底しているのですね。個人的な空気ももちろんですが、空間全全体もきれいで、以前のホールのイメージとは違うなと強く感じました。
石橋店長 私も昔ながらのスロッターですから、昔ながらの雰囲気も好きなのですが(笑)、お客様にも『マルハンなんば新館』は全席禁煙で、「きれいな場所」というイメージを持っていただいて、お遊びいただいていますので、たとえばゴチャゴチャした装飾であるとか、雑誌の取材であるとか、そういうものとは一線を画して、空間の演出にこだわっています。
パチンコ店の〝なんとなく汚い印象〟というのは、「タバコのヤニ」によるところがすごく大きくて、オープンから5年経った頃に「店内がこんなにきれいなのはやっぱりすごいな」と感じました。弊社の役員や本社の部長が視察に来たときも、やはり「年月が経ってもきれいな状態を保っていることにはすごいね」と言ってもらえます。やっぱり〝全館禁煙の力〟というのがものすごく大きいなと感じます。