奪われてしまった鈴木萌花の「いつもの卒業式」
今回からスタートする鈴木萌花編で、アメフラっシのメンバーへのソロインタビューは一巡することになる。ラストは鈴木萌花で、ということはかなり早い段階で決めていた。
彼女はこの3月で高校を卒業。その直後には初の舞台に挑戦することも決まっていた。まさに人生の中でもかなり大きな局面を迎えるわけで、そのあたりの話は3月が終わらなくては聞けないから、必然的に登場順は最後、ということになる。
だが、そのタイミングで襲いかかってきたコロナ禍。ニュースでは多くの学校で卒業式が変則的な形で行なわれていることが報じられていたが、鈴木萌花もその「当事者」になっていた。
「そうなんですよ。体育館にみんなが集まって……という形ではやることができなくて、分割っていうんですかね? みんながそれぞれの教室にいて、校内放送で卒業式が進んでいって、私たちはそれを聴いているだけでした。たしかに残念だけど、どんな形でも卒業式ができただけでよかったんだろうなって思います。最後にお友達と会うこともできたし」
本来であれば、気持ちも新たにこの4月から「新・社会人」としてはばたくはずだったが、さすがにこれでは社会人としての実感は薄い。
「もう制服も着ないし、毎朝、学校に行くこともなくなったから、そこは『あぁ……』と思いますけど、まだ高校生活が残っていたとしても、今、学校がないから、あんまり変わらないんですよね、きっと(苦笑)。だから、たしかに実感というのはあんまりないかもしれないです」
これはもう日本中の18歳がみんな感じていることなのかもしれない。令和に生きたものは多かれ少なかれ、この時期の思い出を背負っていくことになるわけだが、鈴木萌花の場合、ひょっとしたら、まったく違う“令和2年の春”を迎えていた可能性もあった、と本人が静かに語ってくれた。