これまではお客さんの優しさに救われていた

今年に入って、市川優月はメンバーの小島はなとの「ゆづはな」として活動する機会が増えてきている。

これは、愛来と鈴木萌花の「あいらもえか」が精力的に動いていることも影響しているのだが、アメフラっシの可能性の「幅」を広げるためには、この時期はとても重要になってくるはずだ。

メジャーデビューという目標に向かって、全員が同じ方向を見つめている状況でバラバラに稼働する。

一見「いまこそ一丸となるべきでは?」と思う方もいるかもしれないが、逆にみんなの気持ちがひとつになっているからこそ、まったく違う場所で、内容もまるで違う活動をしていても「この成果をアメフラっシに持ち帰る!」という意識が非常に強く、グループにとって、すべてがプラスに作用している、というのが現状である。

ゆづはなの活動に関しては、小島はながこの連載でも語っているように「自分たちでなにができるのかを考えて、実際にやってみよう」という考え方がベースにあるのだが、それを受けた運営チームは、ゆづはなの2人だけでパフォーマンスをする機会を与えた。

それが3月20日にAKIBAカルチャーズ劇場で開催されたアイドルイベントへの出演だった。

このイベントに関しては、すでに本連載の第10回でレポートを掲載しているので、詳しくはそちらを読んでいただければ幸いだが、とにかく2人にとってはとんでもないアウェー空間であり、1曲目を歌い終えたあとのMCコーナーでいきなりその洗礼を浴びることとなる。

「ヤバかったですね。さすがに焦りました。いろんなアイドルさんのファンの方が集まっていると聞いていたので、事前にはなと話し合って、少しでも会場をひとつにできるように、最初からコールを煽るようなトークを多めにしていたんですよ。

そうしたら会場がシーンとなっちゃって(苦笑)。その瞬間、思い知りましたね。いつも見に来てくださるお客さんって優しいんだなぁ~って。私たちのMCが面白いんじゃなくて、お客さんたちが笑ってくれるから、なんとなく面白いような空気になっているんですよね、会場が。もっとがんばらなくちゃダメですね」

ある意味、得意なジャンルのトークパートが崩れたことで、肝心のパフォーマンスにも翳(かげ)りが出てしまった。いつもは4人で歌っている楽曲を2人ですべてフォローしなくてはいけないので、それだけでも大変なのだが、市川優月の頭の中には「2人になったからといって迫力を大幅に減らしたくはない」という思いもあった。はじめて2人だけで立つステージにしては課題が多すぎるような気もするが、そこにもある理由が存在していた。