大学進学も真剣に考えたアイドルの心の葛藤

アイドルにとって「高校3年生」というのは特別な時間になる。すでに大ブレイクしていれば別だが、そうでない場合、どうしても「このままでいいのだろうか?」と将来について、真剣に向き合うタイミングになるからだ。

芸能界とは、じつに不安定な世界である。どんなに実力があっても人気が出るとは限らないし、どんなに努力したからといって報われるわけでもない。人気が出たとしても、1年後もそのポジションが確約されているか、といったら、それはまた別の話だ。

誰もが将来について考え、進路を決める高3の夏。そのタイミングで、悩んだ末に芸能界を去るという決断をするアイドルもけっして少なくはない。そして、鈴木萌花も深く悩むこととなる。

「高3の夏はいろいろ考えるよって言われてきましたけど、まさか、こんなにたくさん考えることになるとは思ってなかったです(苦笑)。

アメフラっシが結成したのは2018年の11月だったんですけど、そのときはなんの迷いもなかったんですよ。絶対にアイドルを続けていくって気持ちは強かったし、すぐに定期ライブがスタートしたり、(雑誌の)BUBKAさんで私たちの連載も始まったりして、あっ、これまでとは違うんだなって、すごく気合いも入りました。

ただ、夏休みのタイミングで、ももクロさんの明治座公演が入って。舞台に出られるのは2人だけで、私はそこに選ばれなかったんですけど、選ばれなかったこと自体は別にそんなに悔しいとかいう気持ちはなくって。それよりも、どうして、このタイミングでみんながバラバラに活動しなくちゃいけないんだろう? って、すごく思ったんですよね。

大きなチャンスだし、いい経験になることもわかってはいたんですけど、私としては『グループとして売れたい!』という気持ちが強かったから、『なんでバラバラに?』という思いを抱いちゃったんでしょうね。

あと焦りもあったんだと思います。私の中では自分が高校を卒業するまでに『メジャーデビューしたい!』って決めて、そこに向けてがんばってきた部分もあって……もう時間がないじゃないですか? だから余計に高校卒業後のことを考えちゃったんでしょうね。ちょっと(アイドルとしての)先が見えなくなっちゃって、周りの友達もみんな進路について話しているときだったので、大学に行こうかな、と。かなり気持ちが揺れましたね、昨年の夏は」