持ち物を見れば、その人のステータスがわかる
ドラマ『愛の不時着』では、北朝鮮の農村部での質素な暮らしを描く一方で、首都・平壌(ピョンヤン)に住む人びとが、スマホを使ったりデパートで買い物をしたり、おしゃれなカフェで休憩したりする様子を描いている。
「北朝鮮と聞くと、貧しいというイメージがあるかも知れませんが、平壌で暮らす特権階級は、一般的な日本人よりも豪華な暮らしをしています」と副代表はいう。「富の再分配がうまくいっていないんです。『富む者はますます富み、貧しい者はさらに貧しくなる』という言葉があるくらいです」(宮塚代表)
宮塚コリア研究所のコレクションには、北朝鮮製のタブレットやポップなデザインのペットボトル飲料、缶ビールなどがあるが「北朝鮮の地方に住む人が、こういったものの恩恵にあずかれているかはわからない」という。
「平壌に住むのはエリート中のエリート。身分証からして違うんです。今は少しゆるくなったようですが、かつては平壌市民の『市民証』を持つ人は、国内を自由に移動できるのに、“その他”の人が持つ『公民証』はどこに行くにも許可が必要だった」と宮塚代表。
副代表によると、韓国で「脱北者」にヒアリングをしても、地方出身者と平壌で暮らした人の話では、その内容に大きな隔たりがあるという。「平壌は地方出身者から羨望のまなざしで見られています」という。
また『愛の不時着』では細かく描かれなかったが、北朝鮮の暮らしを象徴するアイテムとして「タバコ」がある。
「北朝鮮はGDP(国内総生産)のわりに、タバコの種類が多いんです。ストレスが多いのか喫煙率が高いというのもありますが、ただの嗜好品ではないんです」と副代表。軍人専用の銘柄があるなど、タバコは自身のステータスを示すアイテムであるらしい。
では、北朝鮮の恋愛事情はどうだろう。
「北朝鮮も『自由恋愛』で恋愛はできます。ただ『3階層51階級』があり、階層を超えて結婚することはできません」(副代表)。3階層とは、人民を「革新」「動揺」「敵対」という3つの「思想」に分けた身分制度で、終生変わることはない。近年は、この身分制度に不満を抱いて脱北する人も多いという。
またドラマと異なり、軍人の男性は人気がない。「兵役が長いんです。人によって違うんですが、だいたい十数年。兵役を終えてから大学に行く人もいる。となると、卒業したころには、いいオッサンです。だから(兵役後は)貿易関係の仕事に就いて、お金(外貨)を稼ぐ人のほうが結婚相手として好まれる」と副代表はいう。
「ドラマでは、カッコいい俳優さんが軍人を演じていますが、朝鮮半島では昔から『南男北女』という言葉があって、南の男性はかっこよく、北の女性はしとやかで綺麗と言われてきた。ドラマとは逆です。それに、北朝鮮で『カッコいい男性』というのは、金正恩委員長のこと。実際に(我々の感覚でいう)イケメンを見つけるのは難しいでしょう」
『愛の不時着』で描かれるのは、まさに「奇跡の出会い」だったようだ。