飲食店への休業要請は一度もなかった

私はソウルで喫茶店を経営している。新型コロナウイルスの感染拡大以降、売り上げは若干落ちたと言えるが、もともと小商いなので事態はそれほど深刻ではなく、マスク着用や衛生管理に気を遣うこと以外は、普段と変わらず営業を続けている。

韓国ではこれまで一般的な飲食店に対し、休業や時短営業の要請がなされたことはなかったし、自粛すべきという社会的な雰囲気にもならなかった。店をしている者としては、非常にありがたいことだった。

飲食店はどこも客足が減っている。外国人観光客をターゲットにしたお店はかなり大変なようだが(実際、ソウルを代表する観光エリアの明洞〈ミョンドン〉では、閉店が相次いでいる)、地元客の方が多かった当店の場合は「意外とお客さんが来てくれる」と感じている。

喫茶店という業種は不要不急で、いつお客さんがゼロになってもおかしくないはずだが、ソウルのどこかで集団感染が起きた日も、そんなことにはならなかった。もちろん、感染を恐れ全く来なくなったお客さんも少なくないが。

なお韓国では、接客を伴わないバーや小規模ライブカフェも、一般飲食店のカテゴリーに入り、こうしたお店も基本的にはこれまで休むことなく営業を続けている(ただしライブイベントはずっと開催されなかった。6月後半頃から徐々にライブを再開しているハコもある)。

感染者の増加と、つのる第2波への不安

2月末に発生した大邱(テグ)での大規模感染以降、徹底的な検査と隔離、カード利用履歴や監視カメラを活用した感染者の動線把握と情報公開で、コロナの抑え込みに成功してきた韓国。

4月下旬に新規感染者数が一桁となる日が続き、皆が安心したのも束の間、連休明けの5月6日に政府が防疫レベルを緩和した途端、梨泰院(イテウォン)エリアのクラブで再び集団感染が起きてしまう。そこから出会い系居酒屋、カラオケ、学習塾、配送センター、宗教施設、マルチ商法の販売所と、首都圏を中心とした様々な密閉空間で感染が続く。

6月下旬の現在も、その勢いは収まるところなく、毎日30~60人前後の新規感染者が報告されている。感染は徐々に地方都市へも広がっており、再度の大規模感染が憂慮される日々だ。

ソウル市は梨泰院クラブ感染直後の5月9日、クラブやルームサロン(接待のあるバー)など密の高い遊興施設(いわゆる夜のお店)に対し、集合禁止の名のもと営業を禁じた。

6月にはこれが段階的に解除される一方で、クラブ、ルームサロン、カラオケの他、フィットネスクラブ、学習塾、ビュッフェ式食堂などの「高リスク施設」に入場する際には、スマホでQRコードを提示することが義務となった。

施設利用者の個人情報を収集し、感染経路を把握するためだ。なおスマホ未所持の場合は、情報を用紙に記入しても良いらしい。