みなさんがいるだけで「これがライブだ」って(愛来)

極論してしまえば、今回のライブは「誰も泣き崩れることなく開演し、誰も暑さで倒れることなく、最後までステージに立っていた」ということだけで「もう大成功だった」と言ってしまってもいい。それだけ特殊な環境下でのライブであった。

ライブが始まってからも、観客は拍手と手拍子だけで「いい空気」を作ってくれた。間奏が観客の大きな手拍子だけで埋め尽くされる光景は、ちょっと感動的でもあった。それだけではなく、男性アイドルの現場でよく見かける、メッセージうちわで感想を伝えてくれるファンもいた。そこに言葉がなくても十分に気持ちは伝わったし、メンバーも「みんなマスクをしているけど、めっちゃ笑顔になっているのがわかる!」と喜んだ。

181日ぶりの再会。しっかりと築いてきたファンとの「絆」は、そんな長い空白期間があっても崩れてしまうどころか、より強固なものとなっていた。メンバーは口々に「みなさんがいたから今回のライブが実現した」と感謝を口にし、愛来は「みなさんがいるだけで『これがライブ』なんだなってなる!」と言い切った。

前述のように、たくさんの規制があることをわかったうえで、けっしてアクセスがいいとは言えない会場まで、わざわざ足を運んでくれたファンに対する感謝の言葉はすべてリアルなものだし、数か月前までは当たり前のように行われていた「有観客ライブ」が、こんなにも幸せなものである、とメンバー全員が実感していた。

だからこそ、このライブでおもいっきり楽しんでほしかったし、あまり体感することができていないであろう「2020年の夏」をたっぷりと組みこんだ内容になった。久々のライブなんだから「ただ歌って踊ってくれれば、それで満足だ」という観客もいたかもしれないが、そこはしっかりと作りこんで「忘れられない思い出にしてもらおう!」というのがアメフラっシ流のおもてなしなのである。

7月18日の「無観客ライブ」と同様に、新曲の『メタモルフォーズ』で幕を開けたステージだったが、まず序盤に仕込まれた目玉演出が『ノンストップで走れ!!!!!!!』。これは今回のタイトルである『RUN! RUN! LIVE』にちなんで、スタプラのお家芸ともいえる『走れ!』シリーズをフィーチャーしたメドレー。ももいろクローバーZの『走れ!』に始まり、なんと男性グループの楽曲まで網羅した11分28秒にも及ぶ超大作! まさに今回のライブならではのスペシャルな演出だった。

そして、もうひとつのスペシャルな演出は「衣装」。前回の「無観客ライブ」でお披露目となった、赤を基調とした衣装で登場した4人だったが、途中から夏ならではの浴衣に着替えて登場してくれた。この着替えの演出もまた粋なもので「ゆずはな」がユニット曲を歌っているあいだに「あいらもえか」の2人が浴衣に早着替えし、今度は入れ替わるように「あいらもえか」の曲のあいだに「ゆずはな」が着替えてくる。

普通だったら一旦、全員がステージから消えて、幕間の映像などを流している最中に着替えてくるところだが、今回はステージ奥の扉を開閉するため、大きなモニターなどを設置することができなかった。だから、常にメンバーがステージに残ってパフォーマンスしつづける必要があった。

結果、このような形での早着替えとなったのだが、徐々に浴衣姿のメンバーが増えていくシーンはなかなか新鮮。特に「ゆづはな」の2人は『Over the rainbow』の曲中に扉の向こうから浴衣姿でそれぞれ登場する、という演出も相まって、非常に印象的なものとなった。