武漢なまりのない“住民”が習近平を歓迎

中国庶民は、面と向かって共産党指導者を批判できないので、批判したい政治家の政敵で対極にある別の政治家を誉める、というやり方をします。習近平を批判したいときは、鄧小平や李克強、汪洋あたりを誉めると、習近平は自分が批判されているように感じるようです。

▲鄧小平 出典:ウィキメディア・コモンズ

感染症の拡大が発覚したあと、政治局常務委員のなかで最初に武漢入りしたのは李克強でしたが、このときCCTVは李克強の映像ばかりを流し、習近平の指示発言を報じるときですら李克強の姿をテレビで流しました。

そして、ネット民もこのCCTVの李克強武漢入りの映像は、SNS上で一日で50万回も「イイネ(賛)」が押され、4000万回も閲覧されました。

▲李克強 出典:ウィキメディア・コモンズ

国家指導者のCCTVのプロパガンダ映像に、そんなに「イイネ」が押されるのは前代未聞ですが、これは中国人民がそれほど習近平に腹を立てていることの現れということなのです。

さすがに王忠林の「習近平への感恩教育」は、あまりに市民の反感を呼びそうだったので、早々に削除されました。

3月10日に新型コロナウイルス感染が発生してから、初めて武漢市を視察訪問した習近平は「全党全国各族人民は、皆あなた方に感動し、感嘆し、党と人民は武漢人民に感謝するのだ!」と武漢市民への感謝を述べました。

ちなみに、習近平が訪れた社区での“住民”たちは、バルコニーに出てマスクをしたまま習近平ににこやかに手を振り、習近平を歓迎している様子が報道されました。

「野菜の値段は高くないですか?」と、マスク姿の習近平がバルコニーを見上げて尋ねると、その“住民”は武漢なまりのない、きれいな北京語で「高くありません!」と答えているニュース映像をネット上でも見ることができます。

それとほぼ同時に、SNSでは住民たちが「今、うちに警官が2人きて(習近平に手を振るために)バルコニーで待機している」などとやり取りしていました。

武漢市当局は、住人たちが習近平に罵声を浴びせないように、一戸あたり2人の警官を配置して、住人を監視すると同時に、警官が住民のふりをして手を振っていたのです。それを住人たちは暴露していました。

それほどまでに武漢市民は、習近平の正能量報道キャンペーンと報道統制と言論弾圧に怒りを隠せないでいたのでした。