新型コロナウイルスがまた拡がり始めているが、世界中の人々を苦しめる元凶は習近平政権の隠蔽によって始まった。中国ウォッチャーの第一人者・福島香織氏は語る「習近平は、言論統制で自らの政権の隠蔽責任を回避しようとしている」と。
※本記事は、福島香織:著『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
美談として報じられた看護師たちの剃髪
中国では習近平政権になって、いっそう厳しい報道統制が敷かれました。中国の記者たちは永らく独自取材をしてこなかったし、公民記者もほとんど活動してきませんでした。
しかし当局の情報隠蔽によって新型肺炎の感染が拡大し、武漢が都市封鎖されるまでになってから、既存メディアの独自取材を行う記者が登場し、方斌や陳秋実のような公民記者も感染と逮捕の危険を承知で現場取材に乗り込んでいったのでした。
これは中国の良心的市民や知識人が、今の中国はおかしいと考えて変えていこうとしていることの証です。こうした動きを、習近平は力づくで抑えこもうとしているわけです。
若い女性看護師たちが、バリカンで無残に黒髪を落とされる映像が2月17日ごろ、中国のネットで流れました。彼女たちは涙ぐみながら「髪の毛はまた生えてくるから。みんな前を向いていきます。必ず無事に帰ってきます」と嗚咽をこらえて語りました。
甘粛省の婦女幼児健康院が、武漢の最前線医療現場に派遣する女性看護師14人は「衛生維持のため」に自ら望んで剃髪したというニュース映像です。
これを中国各媒体は当初「美談」として報じました。命がけの医療現場に行くために、涙をのんで髪を剃られる彼女らの自己犠牲を感動的に報じ「最も美しい逆行者(脅威に向かって行く者)」などという見出しをつけたのです。
多くの市民は、このニュースを異様だと感じました。医療現場に行くために女性看護師が髪を剃る自己犠牲のどこが美談でしょう。政治宣伝のために無理やりやらされているのだと皆が思いました。
医療崩壊が伝えられる厳しい感染症の現場に送り込まれるだけでなく、中国の大プロパガンダのために、必要もないのに髪を剃るパフォーマンスをさせられるなんて、なんて酷な仕打ちでしょう。