「お前を一年以内にレイプしてやる」と脅迫された

福島 :深圳との境界に近い新屋嶺まで、連行する必要はなかったですよね。どうして、顔や実名をさらしてまで、この問題を抗議しようと思ったのですか?

ソニア:私の受けた仕打ちは、セクハラというレベルのことかもしれませんが、他にもっとひどい目にあった人たちがいることを知っているからです。

私の知り合いの中学生の少年は新屋嶺でレイプされました。ひどいショックを受けているのを見て、私が代わりにこうした告発をしなければいけない、と思ったのです。他にも直接の知り合いではないけれども、女子学生が拘置所内で警官にレイプされた話を聞きました。

福島 :親中派メディアの星島日報が裏をとって報じていますが、16歳の少女が9月27日に警察署で複数の警官に何度もレイプされて、妊娠していたことが11月に判明しています。彼女はエリザベス病院で堕胎手術を受けていたとも、台湾紙・自由時報が病院側に裏をとって報じました。香港当局はネット上の噂については論評しない、としていますが、これはかなり悪質な事件で警察内部でも問題になっているようです。

韓国メディアのKBSも、拘置所内のレイプ事件については、匿名の警官の証言をとって報じました。あなたの勇気ある告発のおかげで、メディアも真剣に取材し、この事件が隠蔽されずに表沙汰になったのかもしれませんね。

ソニア:顔と名前を出して告発したことで、私はずいぶん親中派メディアから叩かれました。また外を歩いていても、親中派市民から罵声を浴びたり「お前を一年以内にレイプしてやる」といった脅迫メールを受けたりもしました。でも、後悔はしていません。

▲「お前を一年以内にレイプしてやる」との脅迫も イメージ:PIXTA

以上です。

香港も新疆ウイグルと同じ道をたどるのか・・・

新屋嶺拘置センターは、香港にもともとある古い拘置所です。8月5日からデモで逮捕された市民が送り込まれるようになりました。

8月11日にデモに参加していた54人が送られたときは、全裸で四肢を縛られ、顔に袋をかぶせられ、警官から暴行を受けた人もいるとの告発がありました。

また、新屋嶺に収容されていた31人が北区医院に移送されたとき、病院側は6人が重傷骨折や皮膚が傷でくっつくような負傷や、打撲で歯が抜け落ちるような怪我や脳内出血などの重傷を負っていたことを証言し、ひどい暴行があったのではないか、という疑いが出ていました。

こうしたことから、新屋嶺はデモ参加者から「恐怖の象徴」とみられるようになり、告発や抗議を受けたことから、11月以降は使われなくなりました。

ですが、この近くに、新たに「反テロ訓練センター」の建設予定があり、予算19億香港ドルが計上されていることが、香港の人権団体・本土研究社の調べでわかっています。この施設は、新疆ウイグル自治区のテロ対策施設を参考にしており、香港警察は2011年から毎年、エリート警官を7人ずつ新疆ウイグル自治区のテロ対策施設での研修に派遣しているそうです。

今の香港デモに対する香港警察の苛烈な暴力は、新疆の公安から学んだと言われています。訓練センターには新疆と同じく反テロ再教育施設のような洗脳施設も併設されるのではないか、と噂になりました。

こうした香港の新疆化に怯え、若者たちはさらに過激な抵抗に訴えていくようになりました。林鄭月娥はそうした抵抗に対し「中央政府に支援を求める選択肢を排除しない」と、解放軍の出動要請を念頭に置いた発言をしたわけです。

※本記事は、福島香織:著『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。