いまの気持ちが分かる"おしゃべりなしっぽ"

ネコのいまの気持ちを知りたいとき、外見上いちばん分かりやすいのがしっぽの動きです。ネコの体の中では、しっぽはかなりおしゃべりなのです。

気分が落ち着いているときは、しっぽは体に添わせて丸めているか、脱力して伸ばしています。移動の際は自然に伸ばし、バランスをとるときに、ちょっと揺らすくらいです。

しっぽがピンと立っているのは、甘え気分やおねだりモードになっているとき。お腹が空いたときや、ごはんの準備の気配を感じると、たいていのネコは、しっぽを立てて飼い主さんのところへやって来ます。

▲いまの気持ちが分かる"おしゃべりなしっぽ" イメージ:PIXTA

とくに子ネコは、ピーンと垂直に立てて、人の脚にさかんに体をこすりつけてきます。後ろからは肛門が丸見えです。これは赤ちゃんのとき、排泄後に母ネコに陰部をなめてきれいにしてもらっていた名残といわれ、甘えたいとか何かをねだって欲求を満たしたいとき、しっぽを立てて陰部をあらわにしてしまうのです。

子ネコのこのポーズは、じつにかわいいもので、外出から帰ってきたときなど、玄関先で思いきりしっぽを立ててまとわりつかれると、もうなんでも許したくなってしまいます。

ネコをかまっているとき、しっぽが左右にバタンバタンと振られ始めたら、イライラや不機嫌になっているサインなので要注意。しつこい愛撫やちょっかいを出すのをやめないと、しっぽの振りが大きく速くなってきます。これは「もう怒るよ!」という合図なので、ごめんねと謝って、すぐ手を引っ込めてくださいね。

ネコが何か葛藤状態にあるときも、しっぽが左右に振られることがあります。

たとえば窓の外にスズメがいて、気になってしょうがない、飛びかかりたいのに窓の外へ行けないなど、思いどおりにならない状況のとき。狩りの衝動を抱えながら、獲物に近づけないことも分かっているので、そのうっぷんがしっぽに表れてしまうのでしょう。

ネコが家の中を歩いているとき「どこ行くの?」とか「今日もかわいいね」などと声をかけると、しっぽをピクッと動かしたり、前後に一回振ってお返事をするネコもいます。

うたた寝中に名前を呼ぶと、しっぽの先だけピクピク反応することも。面倒なので顔も上げず「聞こえてるよ」と、しっぽだけで返事しているのです。

獲物を見つけたり、動くおもちゃで遊んでいるとき、飛びかかろうとする直前にピクッとしっぽをけいれんさせることもあります。これは行動前の「いくぞ」という勢いづけのようです。

怯えているときや、けんかの相手に降参するときは、うずくまってしっぽを股の間にはさんでしまいます。急所を守ろうとする意味もあり、無防備に仰向けで寝るクセのあるネコも、しっぽで下腹部をおおっていることがあります。

初めてネコと暮らす人が驚くのが、急にしっぽが3倍くらいに太くなったときでしょう。不意に驚いたり、見知らぬ相手に出くわして威嚇したりするとき、一瞬でしっぽの毛が逆立ち、太くなったように見えるのです。しっぽは、逆U字型に曲げられ、弓なりにした全身の毛が逆立っていることもあります。

これは恐怖と威嚇(攻撃性)が入り混じった状態で、相手に体を斜めに向けてつま先立ち、自分を大きく見せようとするネコの本能なのです。そのポーズのまま前に跳んだり、後ろに跳んだりすることもあり「ネコの横っ跳び」と呼ばれたりします。

個体差や年齢で反応はいくぶん異なりますが、ネコのしっぽは「口ほどにものを言う」のです。しっぽもコミュニケーション・ツールなんですね。