散歩が大好きな大ちゃんと大嫌いなモコちゃん
こんにちは。獣医師の北澤功です。皆さん、犬は必ず散歩させなければいけない、と思い込んでいませんか? 今回は「犬の散歩は、必ずしも必要ではない」理由をお話ししようと思います。まずは、私の実体験から――。
ある日のこと。診療を終えて帰宅途中、近所に住む大泉さんが僕の前をゆっくりと杖をつきながら歩いていました。
その横には、ゴールデンレトリバーの“大ちゃん”が口に散歩バッグをくわえ、大泉さんのスピードに合わせて歩いています。リードはついていますが、緩んでいて機能していません(笑)。
僕が後ろから声をかけると「お、先生」と言いながら、立ち止まって振り向いた大泉さん。僕たちが話をしている間、大ちゃんは大泉さんの横に座り会話を聞いていました。大ちゃんは大泉さんとのお散歩が大好き。とても微笑ましい風景です。
大泉さんと大ちゃんと別れ、しばらく歩いていると、今度は山田さんが歩いてきます。すぐ近くにはチワワの“モコちゃん”の姿も。先ほどの大ちゃんのお散歩とはうってかわって、モコちゃんはリードで山田さんに引っ張られて、ずるずると引きずられながら散歩していました。
山田さんは歩かせようと、モコちゃんは動くまいと、お互いに頑張っています。僕が近づくと、モコちゃんは「ウー」とうなりました。病院では僕を見ると喜んで尻尾フリフリなのに。
山田さんは、さっとモコちゃんを抱き上げました。すると今度は、僕に向かって尻尾を振りだしました。「先生、この子いつもこうなのよ」と山田さんは話し始めました。
「家では、とてもフレンドリーなのに、外を歩かせようとすると全く動かなくて……。人に会うと唸るし……。他のワンちゃんのことは、もっと嫌いみたいで、向こうから来ようものなら、腰を低くしてとにかく逃げようとするの。散歩の時は動かそうと引っ張るか、逃げようとするのを抑えるかのどっちかで、常にリードは引っ張られっぱなし」とのこと。なかなか大変な散歩風景です。