シェアを増やして成功した「まるか食品」

まるか食品株式会社(広島県/川原一展社長)は、スルメフライを主体に、海産珍味およびスナック類の製造販売をしています。まるか食品の「イカ天瀬戸内レモン味」は、工場を24時間稼働させるほどの大ヒット商品です。

注文が殺到して生産が間に合わず、出荷までのリードタイムが「3ヵ月」になったとき、川原社長は「これ以上注文を受けると、納期がさらに遅れて、お客様に迷惑がかかる」と思い、販促の手を緩めていました。

当時、展示会へ出展する際も「注文をいただいてもお引き受けできないから、控えめに商品を展示しよう」と1小間〔小間=出展スペースの単位、ブース〕の小さな展示を考えていました。そのことを知った私は、川原社長に次のようにアドバイスをしました。

小山 「川原さん、1ブースはダメ。最低でも2ブースにしたほうがいい」

川原社長 「ブースを広くすれば、それだけたくさんのお客様がお見えになります。新規のお客様から『取引をしたい』とお申し出をいただいても、今の生産体制ではいっぱいいっぱいで……。仮にお受けした場合、納期がさらに遅れて4~5ヵ月先になってしまいます」

小山 「新規の発注があった場合は『値引きを要求してくる取引先』を、あと回しにする。あと回しにした結果『早く納品してほしい』とクレームが入ったら、そのときは『正価販売のお客様を先に納品しております』と言えばいい。儲けが出る相手を先に納品をして、儲からないところは後回しにする。そうすれば値上げ交渉に持ち込むこともできるので、粗利益額を増やすことができる。それと、一から十までを一気通貫でやる必要はない。袋詰めが間に合わないなら、隣の会社に袋詰めを外注する。基幹技術を明かさない範囲で同業他社を下請けにする。製造ラインをもうひとつ増やすなど、手はいくらでもある。大事なのは、シェアを増やすこと」

▲いか天スナック イメージ:PIXTA  

既存のお客様だけでは、現状維持(前年実績)が精一杯です。川原社長は、現状維持の路線から拡大路線に変更。

まるか食品は、顧客の声に合わせて自社を変えたから、粗利益額を大きく伸ばすことに成功しました。

※本記事は、小山昇:著『できるリーダーは失敗が9割 自分史上最高の営業利益を手に入れる「仕事」の極意』(マガジンハウス:刊)より一部を抜粋編集したものです。