重要な役割を果たす睡眠にもっと「投資」を

私は最近、もっと睡眠に投資するべきだと考えています。

2013年、NHK『あさイチ』で「女のカネ お金がたまる夫コントロール術」として紹介された「家計の黄金比率」というものがあります。それによると、月に手取り30万円だとすると、住居費に25%(7万5000円)、食費に15%(4万5000円)、光熱費6%(1万8000円)、通信費5%(1万5000円)などとして、預貯金に18%(5万4000円)振り分けるとお金がたまる――というものでした。

これを見て、私は自分が寝ることにお金を使っていたのか気になりました。思い起こすと、私自身、結婚してから寝具を買った覚えがなかったので、20年以上寝具にお金を使っていないことになります。枕くらいは替えたかもしれませんし、子どもが生まれて布団は買いましたが、それにしても大した額ではありません。

しかし、睡眠は一日の3分の1を占める重要なもの。人生の3分の1は寝ているというのに、その割にはお金をかけていないと言わざるを得ません。

「家計の黄金比率」でも、住居に一番お金を使っていますが、住居の「住」にお金をかけるのは、雨風をしのぎ、安全に寝られる場所を確保するためではないでしょうか。安全に食べられる場所は外にもありますが、雨風をしのいで、質のいい睡眠を取るためには、住居が必要となります。

そこで、私は間違えていたことに気がつきました。「衣食住」のうち「住」、さらにそのうちの「睡眠」にお金をかけていないということに。

衣服も、本来は体を守るための、防御服としての役目がありました。食も、健康のため、命をつなぐために食べていたはずです。それが、ファッションと嗜好という、命にかかわらないものにシフトし、そこに私たちはお金をかけています。

総務省統計局が発表した『令和元年家計調査報告』によると、総世帯(平均世帯人員2.97人、世帯主の平均年齢59.4歳)の消費支出は、1世帯当たり1カ月平均29万3379円となっています。

月々約29万円出費するということは、1年間で約350万円の出費です。月給が30万円で出費が29万円なら、その家庭では子どものために何もできないと思われます。

しかも、このデータでは住居に月々1万7103円(5.8%)しか使っていないことになっています。住宅ローンを払い終えた人がいるにせよ、この金額には納得できません。月に1万7000円の物件など、大学生向けの部屋でもありません。

『あさイチ』で紹介された黄金比率のほうが、まだ私たちの生活の実情に近いのではないでしょうか。

また、総務省の統計では食料に8万円以上(27.4%)使っていることになっていますが、これもおかしいですよね。食事にこんなに使う余裕、普通はありません。

では、寝具類はどうでしょうか?

統計結果では年間9984円で、月々たったの832円しか使っていないことになっています。住居費や食料費については疑問のある統計ですが、この数字は現実に近いと思われます。これではいけませんね。やはり健康に、さらに言えば「睡眠」に投資しなければダメでしょう。

▲重要な役割を果たす睡眠にもっと「投資」を イメージ:PIXTA

「健康」といった時に、今まで私たちは食事や運動のことしか考えていませんでした。食べるものは健康にかかわることであり、しかも毎日消費されていくものなのでお金をかけていますよね。あるいは、健康を保つためにお金を払ってスポーツジムに通ったりしています。

しかし、それは間違いだったのかもしれません。健康のためには過度な努力も必要ないし、“寝ればいいだけ”の話です。ただし、寝る時にはポイントがあります。

健やかな生活、良い睡眠のために、やはり投資しなくてはならない――この発想は今までなかったのではないでしょうか。こうした考えをベースに、私は「睡眠は量ではない、質が重要だ」と主張したいのです。


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