あらゆるものについて言論の自由は大事だ

▲美濃部達吉 出典:ウィキメディア・コモンズ

記者 憲法の規定そのものについてはどうですか。

皇太子 ですからやはり、憲法をどう解釈するかということになってくると思います。明治の時代からだんだんに、憲法の解釈の違いが出てきていることはあるのではないでしょうか。
(中略)

記者 訪米前の会見で、1930年代から敗戦までは、それ以前、それ以後と比べて天皇のあり方がまったく違うということをおっしゃったようですが、それはどういう意味ですか。

皇太子 天皇機関説とかああいうものでいろんな議論はあるわけですが、一つの解釈に決めてしまったわけですね。そのことをいってるわけです。

だから、大日本帝国憲法のいろんな解釈ができた時代から、できなくなってしまった時代ということですね。その時にある一つの型にだけ決まってしまった。

美濃部(みのべ)博士は戦後もたしか、大日本帝国憲法のままでもやっていけると述べているわけですね。

記者 天皇制への考えが、バラエティーに富んでいることがいいということですか。

皇太子 そういうことよりも、やはり言論の自由が大事だということです。

記者 国民の側が、天皇をいろいろに解釈できるような言論の自由ということですか。

皇太子 そういうことばかりでなく、全般的にあらゆるものについて言論の自由は大事だということです。

▲1935年の貴族院における美濃部達吉 出典:ウィキメディア・コモンズ(『アサヒグラフ』1948年6月23日号)

「天皇機関説とか、ああいうものでいろんな議論はある」「大日本帝国憲法のいろんな解釈ができた時代から、できなくなってしまった時代」「美濃部博士は戦後もたしか、大日本帝国憲法のままでもやっていけると述べている」というお言葉。

そして「全般的にあらゆるものについて言論の自由は大事だ」というお言葉は、明治天皇の五箇条の御誓文にある「広く会議を興し、万機公論に決すべし」「上下心を一にして、盛に経綸を行うべし」を踏まえてのものと見受けられる。

もちろん、昭和天皇が昭和21年1月1日に発せられた「新日本建設の詔」も踏まえられたものだろう。

また、憲法問題を考えるうえで、憲法の解釈を重視しておられることも明らかだ。

※本記事は、江崎道朗:著『天皇家百五十年の戦い』(ビジネス社:刊)より一部を抜粋編集したものです。