「虫歯になっても、歯医者で治せばいいじゃん」。その考えは間違っていると話すのは歯科医師・ほりうちけいすけ氏。治療と言っても、虫歯になった歯が元に戻るわけではありません。虫歯になってしまったら、一生そのリスクを背負っていかなければならないのです。このように、多くの人が口腔環境について、間違った考えを持たれているので、これを機に考えを改めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は、ほりうちけいすけ:著『歯の寿命を延ばせば健康寿命も延びる』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
きちんと歯を磨けている人は少ない
多くの人:「毎日、歯磨きをしているのになぜ虫歯になってしまうの?」
歯医者 :「きちんと歯磨きができている人はあまりにも少ない」
歯が悪くなる原因のほとんどが、歯に付着した糖分を餌にして増殖する細菌です。この細菌が酸を出して歯を溶かすことによって虫歯が発生し、深部に侵入していきます。
また、周囲の歯肉に炎症を起こして歯肉炎にもなってしまいます。ここにタンパク質を餌にする別種の細菌が繁殖することによって、歯周病へと進行していくのです。
しかし、歯に付着した細菌が、すぐに歯を溶かし始めるわけではありません。細菌が歯に悪さをするためには、ある一定量にまで増殖して、歯垢という細菌集団を形成しないといけません。
それから、歯を溶かすための酸を生産する時間も必要ですから、細菌が付着してから歯のカルシウムを溶かし始めるまでは、いくら早く見積もっても72時間はかかります。ですから、理屈上では3日に一度きれいにこの細菌を除去すれば、虫歯になることはないはずなのです。
例えば、普段きちんと歯磨きできている人が、たまにチョコレートを食べてそのまま寝てしまっても「翌朝起きたら虫歯になっていた」なんてことは決してありえません。多くの人は毎日歯磨きをしていると思うのですが、それでも虫歯になってしまうのは、そこになんらかの誤りがあるはずです。
ですが「磨いている」と「磨けている」は違います。歯磨きの目的は、虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊(歯垢)を取り除くことであり、歯ブラシで歯をこすることではありません。
このあたりを理解している方も、あまり多くはありません。ほとんどの人は歯の清掃にムラがあります。
毎日、それも1日3回歯磨きしていても、常にきれいに清掃できているところと、常に汚れが取りきれていないところが混在しています。せっかく歯磨きしているのですが、この常に汚れが取りきれていないところから虫歯が発生して、それまでの努力が水の泡になっています。