第21回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でグランプリを受賞し、映画『HiGH&LOW THE WORST』『仮面ライダーセイバー』や舞台『赤と黒 サムライ・魂』など、映画・ドラマ・舞台で俳優として多彩な活躍を続ける市川知宏さん。

そんな市川さんの最新主演作『完全なる飼育 étude』が公開されたことを記念して、映画のこと、そして来年30代に突入する自身のことなどを撮りおろしカット満載でお届けします。

蒼と僕の演技が比例して成長していく感覚

――『完全なる飼育』シリーズ9作目となる『完全なる飼育 étude』が、11月27日に公開となりました。

市川 今作を撮られた加藤卓哉監督とは以前、別の作品でご一緒していて、そのときに監督の次回作で自分に合う役があるからタイミングが合えば…とお話しくださったのです。

でも、そのときはそれが『完全なる飼育』だということは聞いてはいなくて、後日、台本を頂いたときに、そこで初めてこのシリーズということを知りました。

役としてお話を頂けたのも嬉しかったですし、歴史ある作品に参加させてもらえるということで、より気合いがみなぎりました。僕自身、今までやったことのない役柄だったので、自分にとって挑戦だなと思いました。

――市川さんからも挑戦という言葉が出てきましたが、若手俳優・蒼を演じるに当たって、特に意識した点はありますか?

市川 今回演じた蒼は若手俳優で、僕自身も俳優。なので、すごく共感できるところがありました。お芝居って突き詰めると自己満足だけど、でもそこにチャレンジする楽しさだったり、葛藤は僕も痛いほどわかります。

月船(さらら)さんが演じる、女性演出家・彩乃さんのダメ出しするセリフは、僕自身にもグサグサ刺さっていました(笑)。そういう意味では等身大で、自分の中にある感情を引き出して臨めたと思います。

――劇中でも、ストレートに心をえぐるようなセリフが序盤から容赦なくあります。市川さんとして蒼を演じつつ、蒼として安次郎を演じることに混乱はありませんでしたか?

市川 それはありました。でも物語の進行と一緒に撮影をしていく順撮りだったので、劇中劇で彩乃さんの演出を受けて、蒼が役者として成長していって感情を引き出させられた感覚はありました。それに伴って、劇中劇の蒼の演技と、本編の僕の演技が比例していると思いました。

僕の感覚だと、監督が加藤監督と彩乃さんの2人いる感じでした。穏やかな加藤監督と厳しい彩乃さんで、アメとムチがすごかったです(笑)。

――タイプの違う2人の演出を同時に受けられる、ある意味すごく貴重な体験ですよね。今作は、シリーズ初となる男女の立場が逆となる設定でした。

市川 正直、僕のタイプ的に飼育するよりは、される方が合っているのかなって(笑)。なのでスッと役は入ってきました。あと演出家と俳優っていうパワーバランスもあって、普段から俳優として演出を受ける側なので、そこは自分に落とし込みやすかったです。

――そういったところも俳優としての経験とリンクする部分がありますね。そして彩乃の演出を受けて、だんだん狂気を帯びていく蒼ですが、一番印象的なシーンはありますか?

市川 彩乃さんに罵倒されるシーンは、俳優として刺さる部分のあったので印象的ですし…。濡れ場も初めての挑戦だったので印象に残っています。監督ともリハの時に手順的な部分で相談をしながら。ただ監督からも“ここは感情で動くシーンだから本番は意識し過ぎずに”と言われたので、思いっきりぶつかって、本番は感情で演技させて頂きました。