世界の中でもパーソナルスペースが狭い日本

不要不急の外出を控え、ソーシャルディスタンスを保つことが、すっかり「ニューノーマル」となりつつある。多くの人が、この不自由な自体の収束を望む一方で、もともとコミュニケーションに苦手意識を抱いていた人たちのなかには、むしろストレスが少なくなったと感じている人もいることだろう。

というのも、そもそも日本は、人間がプライバシーを守るのに欠かせない「パーソナルスペース」が非常に狭いのだ。

住居自体もさほどゆとりのある作りではないだけでなく、満員電車や渋谷のスクランブル交差点などは、外国人にとっては観光スポットになるほど! もしかすると、赤の他人とのすし詰め状態に耐えられるのは、世界中でも日本人くらいかもしれない……。

そんな物理的な距離の近さが、メンタル面にも影響していることに気づいている人は、いったいどれだけいるだろうか。ファッションや身だしなみ、髪型など、必要以上に他人の様子が気になってしまうのは、パーソナルスペースが狭いからこそ。

裏を返せば、「自分も人からの評価を気にしている」ということ。生きづらさを感じるのも仕方がないのかもしれないが、そんな日本の環境を知っておくだけでも、自分のストレス源への認識が変わっていくことだろう。

▲世界の中でもパーソナルスペースが狭い日本 イラスト:林 ユミ

「気がつく」ことはエネルギーを消耗する

櫻井先生いわく「気を遣う」という言葉は、中医学的にいうと、まさに言葉の通り「気」を使っている状態なのだとか。気は見えないものの、私たちの体と心を健全に維持するために欠かせないエネルギー。したがって、気を遣うたびに、あなたのエネルギーは減ってしまう、というわけである。

つまり、周囲からは「気遣い上手」「気が利く人」などと重宝され、好感度が高くとも、当の本人は四六時中気を遣い、気を配り、どんどん“消耗”している。そして気が消耗すると、あなたのメンタルにも大きな影響を及ぼすことに……。

最近よく耳にする「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という気質を持つ人に顕著な傾向だが、生まれつき感受性が強く繊細な性質な人ほど、普通の人が気がつかないところまでみえてしまい、社会の中では生きづらさを抱えてしまうことになる……。

もちろん、人の性質に正解も不正解もない。ただし、社会での多数派は、どこか鈍感に見える人たちのほうであるということを認識するとともに「自分は繊細なタイプである!」と自覚しておくだけでも、あらゆる場面でフレキシブルな対応をすることができるはずだ。