スクラムは8人の力を合わせてコントロールする科学

オーストラリア、日本、イングランド――各国代表を率いて100勝達成。世界のラグビー界で、稀代の名将と呼べるに相応しい実績を挙げているエディー・ジョーンズ。彼は、数々の勝利を「プレッシャー」をコントロールして手繰り寄せてきた。

その一手としてスクラムがある。選手時代は、フッカーという最前列の中心でスクラムをコントールしてきた。世界屈指の強豪国であるオーストラリア代表チームに、あと一歩という所まで近づいた。その後、教師としての仕事をこなし、ラグビー指導者に。今でもスクラムというプレッシャーの力を、見つめ続ける。

「スクラムは、8人の力を合わせてコントロールする科学だ」

選手としての経験も踏まえながら、スクラムを見ることができるエディー氏の言葉には、現在指揮をとるイングランド代表の巨漢フォワードたちも、真剣な顔で聞き入る。

なぜスクラムを重視するか。いわく「ラグビーの試合中に起こる、アンストラクチャード(カオス)な状況での勝ち方を教えるのは非常に難しい。なぜなら、この状態では味方・敵・ボールが動き続け、その結果スペースも動き続けるからだ。これに対し、8人対8人での狭いスペースで、力比べをしながらボールを奪い合う戦いは、比較的教えやすい」

もちろん、誰でも簡単にスクラムを強化できるという訳ではない。名将は「スクラムの科学」を自分なりに突き詰め、選手達に落とし込んでいる。

ジョーンズ氏が、日本代表HCを務めていた2012〜15年当時。日本代表のライバルとして知られていたのがジョージア代表。スクラムは、ジョージアの「国技」と言っていいほどにプライドを賭けて組んでくる。グルジアの大男たちから、名将は多くのことを学んだ。

時は流れ2020年。この秋限定でオータムネーションズカップという、欧州で行われた大会では、イングランド代表はジョージア代表をスクラムで徹底的にいじめた。イングランド代表は日本代表とは違って体格的な不利はない。しかし、スクラムの優劣はそれだけでは決まらない。8人が一体となる必要がある。

「スクラムは、8人それぞれが“スクラム人格”とも言える、個々の組み方を持っている。これをスクラムの中心でコントロールする仕事を担う選手が“フッカー”。プロチームにもなれば専属のスクラムコーチが現場につき、選手たちに違った視点を教える。それを後ろから見つめるのが、HCである私の仕事」

現在もスクラムマシーンを使って、イングランド代表のフォワードを務める面々に、プレッシャーを与えているジョーンズHC。鍛えられたイングランドのスクラムは、今度は相手チームへの強烈なプレッシャーとなっていくだろう。2021年のイングランドラグビーは、スクラムにも要注目だ。


12月21日に発売するエディー・ジョーンズHCの新刊『プレッシャーの力』(小社刊)は「プレッシャー」をキーワードに展開する、名将の指導論・勝負論・人生論。

▲『プレッシャーの力』(エディー・ジョーンズ:著)