「A社・B社・C社、どこに転職しようか?」など、人生の大事な局面での決断には悩む人が多いもの。論理的思考のプロである太田龍樹氏によると、後悔しない判断をするためには、論理的な哲学を持つ必要があるとのこと。そして、自分の哲学を形作るためには「スイング思考」を使って、具体的な思考と抽象的な思考を行き来する必要があるようです。気になるその方法とは?
※本記事は、太田龍樹:著『一番いい答え- 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
後悔しない決断のためには「哲学」持つこと
後悔しない選択をするためには、自分のなかに論理的な哲学を持つ必要があります。
そのためには「あなたの意見」+「事実・証拠」+「理由」の三位一体をもって、哲学がわかりやすく明確になればいいのです。
意見は、できるだけ単刀直入なほうがシンプルになります。事実・証拠・理由は、具体的なほうが信頼性が高まります。哲学をつくるには「抽象と具体をセットで考える」ことが大切なのです。
具体的なものばかり羅列すると、言いたいことが自然と多くなります。そうすると、あなたがつくり上げる哲学が不明確になります。一方、抽象的なことばかり羅列すると「つまり、どういうことなのか」と哲学が不明確になります。
抽象と具体をセットとして一対で考え、常に抽象から具体へ、具体から抽象へと考えるために「具体と抽象のスイング思考」をすることをおすすめします。この具体と抽象のスイング思考をすることで、思考に一貫性が生まれ、あなたのなかに哲学が生まれます。哲学があれば、決断に迷わなくなります。
「哲学」とは「全体を貫く基本的な考え方・思想」のことです。いわば、思考の「基本的スタンス」であり「拠り所」という意味です。あなたの考えが一貫していなければ、論理的に弱くなり、哲学そのものの信頼性も揺らぎます。
「哲学」をつくる3つのステップ
それでは、スイング思考を使って、哲学をつくる手順を紹介していきます。
【ステップ1】
具体的事象(データ)を徹底的に情報収集する。
【ステップ2】
そのデータ(具体的事象)を“一言(抽象語)”で表現してみる。
【ステップ3】
最後に、その一言が一つひとつの情報を包み込んでいるかを再チェックしてみる。
以上、3つのステップを踏むことで、哲学(軸)は構築できます。
たとえば、経営戦略の観点から「わが社における今後の雇用制度のあり方」について、ステップを踏みながら哲学をつくってみましょう。
▼ステップ1
収集すべき情報は、会社の現状(財務力・キャリア制度・福利厚生・退職金制度など)や理念(実力主義で人材登用していくなど)になります。次に、新聞や業界紙から経済状況や他社動向を把握し、最後に厚生労働省などから出ている雇用などの統計・データから情報収集します。
▼ステップ2
収集した情報を基に、会社を取り巻く環境について「企業環境は産業の空洞化がますます進んでいくことで、国内での生産はとにかく高コストである」と結論を出してみます。その際、会社に対する一言を「全社員正規雇用制度の破綻」という抽象語でくくってみます。
▼ステップ3
その一言であった「雇用制度の破綻」という言葉と、世の中の動向にズレがないか、もう一度自分が収集した情報に照らし合わせて確認します。
以上が「哲学」のつくり方です。結論としては次のようになります。
「私たちの会社を取り巻く環境は、とても厳しい。その結果、日本だけでビジネスを続けていくのか、否かの選択に迫られている。仮にどちらを選択したにしろ、次の大きな問題にぶち当たる。それが『全社員正規雇用制度の破綻』。
高コスト体質の企業では、早晩世界との競争に敗れ、この会社自体の破綻の問題になりかねない。だからこそ、雇用制度の大転換をするのか、しないのかという今後のあり方を考えねばならない」
具体と抽象をスイングさせて、あなたが言いたい大きな哲学を構築してください。そうすれば、あなたの話に一貫性が生まれます。より論理的で、より信頼性のある哲学は、スイング思考を使うことで見つかるのです。
「転職すべきは、A社かB社かC社か」という悩みを抱えているとして「A社は実績に応じた年俸制」「B社は終身雇用制」「C社は創業まもないが、成長性のある業界の会社」といった事実(データ)がある場合、どのデータを採用し、どこに転職すればいいのか。
それは、あなたが何を重んじ、何を大事にしているかといった価値観、つまり理由が重要になります。つまり論理的な哲学に基づいて判断する必要があるということです。
この転職問題を考えるにあたっては、ここに書いた以外のデータももちろん存在するでしょう。転職問題など、人生の局面で悩んだときには、特に哲学が重要になるのです。