2020年1月に再選を果たした台湾の蔡英文総統。台湾といえば、中国の“嫌がらせ作戦”にも思えるパイナップルの輸入禁止措置が今月1日から始まっていますが、むしろ日本は年間輸入量が過去最多を更新し「台湾加油!(台湾ガンバレ!)」の雰囲気が広がっています。評論家で台湾独立運動家の金美齢さんによると、安倍元首相も蔡総統再選時には熱いメッセージを送ったようです。

※本記事は、2020年7月に発売した金美齢:著『愛国心 -日本、台湾-我が2つの祖国への直言-』(ワニ・プラス:刊)より一部抜粋編集したものです。

保守派からは批判されたこともあった蔡英文

蔡英文はソフトな雰囲気を持っていることもあってか、台湾独立派からは「やり方が生ぬるい!」「もっと中国に強く出るべきだ!」などと言われがちです。また同性婚を認めたことなどで、台湾の保守派から批判されたこともありました。

事実、昨年の選挙時でも蔡英文が、再選をかけた総統選挙前に行われた地方選で大敗を喫したこともあり「蔡英文を民進党の代表から降ろして、行政院長経験者の頼清徳を出すべきだ」と考える人たちもいました。しかし私は途中で蔡英文を降ろすのは間違いであり「政権の簒奪(さんだつ)になる」として猛反対しました。

頼清徳も昔からの知り合いで、私の新宿の事務所にも何度か訪ねてきています。彼も台湾独立派で、若くてイケメンでもあるのですが、その時は「今」ではない。こうした動きを察知して、私は頼清徳にはっきりこう言いました。

「あと4年、蔡英文をなんとしてでも支えるべきだ。そのあと、あなたがリーダーになるのは間違いないのだから」

▲賴清德 出典:ウィキメディア・コモンズ(總統府)

こういうことをはっきり言うのも年寄りの役割というものです。口に出すことは大事なことです。

私は台湾国籍で日本の選挙に投票権を持たないときから、日台関係に熱心な日本の政治家を応援してきましたし、日本国籍を取って台湾での投票権を失ってからも、台湾の選挙にコミットし続けています。

もちろんそれぞれのときで、それぞれの立場をわきまえながらですが、私にとって最も大事な「日台関係」を良好にする考えを持っている政治家を応援するのは当然のこと。

これは安倍元首相に対する姿勢と全く同じです。安倍支持を言っただけで、評論家のくせに偏っているとか、権力におもねっている、お友達だアベ友だ、などと大騒ぎする人があとを絶ちません。しかし、応援していた友人が首相になっただけのことで、権力を持った人とお友達になったのではありません。

「有権者である自分たちの力で、政治家を育てる」「やってほしいことを要求するだけではなく、応援する」という意識が低い日本だからこそ、こうした的外れな批判が行われるのでしょう。