チーズ臭にまさかのクレーム
配達をしていると、1日に1回はタワーマンションに配達しているような気がします。そんな都心部にそびえ立つタワーマンションには、住民用エレベーターと業務用エレベーターの2つを設置しているところがあるのです。
業務用のエレベーターは、我々のような配送業者のほか、ペットと連れた住人が利用するのです。そんな業務用エレベーターの壁に貼られていたのが「チーズの匂いを漏らさないように」というもの。
貼り紙を読んでみると「最近『チーズの匂いがひどい』という苦情が寄せられました」とのこと。それ以上細かいことは書かれていなかったので、ここからは私得意の推理になりますが、ピザの配達直後にエレベーターを使った住民からの苦情なのでしょう。チーズの匂いに反応した犬が、ギャンギャン吠えたために「なんとかしてほしい」との思いから管理会社に連絡をして、注意書きがエレベーターに貼られることになったと思われます。
もしくは、その住人がチーズの匂いが気に入らなかった、という可能性もなくはありません。
とはいえ、ピザといえばデリバリーのド定番。私もたまに運びますし、デリバリーのピザチェーンなんて星の数ほどあります。100%排除しようなんて、とてもじゃないができるわけがありません。
もし、私の推理が正しくて、チーズの匂いに犬が反応して吠えてしまうのが原因だった場合、階段を使うしかありませんが、タワーマンションの高層階は階段で行くことは不可能です。
一休さんなら「このはし、渡るべからず」の看板に対する回答のように、見事なとんちでこの状況を乗り切るところですが、配達員にとってはどうすることもできない困った問題なのです。
忍者屋敷のような入り口に右往左往
最後はRPGの迷宮、もしくは脱出クイズのような体験談を。
そこは港区の閑静な場所にある高級住宅地。瀟洒(しょうしゃ)なデザイナーズマンションにある困ったルールは「おしゃれな雰囲気を損なってはいけない」というもの。
緑豊かな木々に囲まれたその建物は、私のような人間でも「なんかすごい」と感じる物件。吹き抜ける風も爽やかに感じてしまいます。
アプリに「裏の入り口からお入りください」との指示があるものの、その場所が見つかりません。建物を2周ほどしたところで、幸運なことに警備員さんを見つけたので、案内してもらいました。
連れて行かれたのは、建物の裏側にある大理石であること以外は何の変哲もない壁……のはずでしたが、警備員さんが軽く壁を押すと、扉が開くではありませんか!
「扉も大理石と同じ模様になっているから、初めて来ると気づかないよね」ニヤリと笑う警備員さん。そして忍者屋敷のからくり扉のような仕組みに驚く私。なんとかマンションへの入館手続きを終え、無事に配達を済ませることができました。
配達後、先ほどの警備員さんに会ったので、配達を無事に終えたことを報告し「扉のところに〈配達業者入り口〉みたいな張り紙をした方がいいのでは?」と提案してみました。すると……。
「配達業者さんが迷っている姿をよく見かけるから、管理組合に提案したことがあったんですよ。でも『そんな貼り紙をしたら、見栄えが損なわれるのでダメだ!』と突っぱねられました」
と苦笑するばかり。ライターとして超売れっ子になって、こういう物件に住む身分になっていたら理解できたのかもしれませんが、このままライターを続けられるかが不安で、ウーバーイーツの配達員を始めたような私には到底理解できない感覚です。
そんなことを思いながら、次の配達先へと向かいました。このようなマンションの独自ルール、今後もいろんなところで遭遇しそうで不安しかありません。