木村君に気を遣わせたら100%の力が発揮できない
新保 新庄さんとのレッスンはどんな雰囲気でしたか?
木村 この空間(IWA ACADEMYの地下1Fにある練習エリア)に入ってやりとりするときは、純粋にバッティングの話から始まる感じで、新庄さんがすごくいい雰囲気を作ってくれるんです。「新庄さん」っていうと「それ、なんか気持ち悪いからツーさんって呼んでよ」と。
「ナイスバッティング!……って、僕が言うのもおかしいんですけど」と僕が言ったら「いや、木村君が言うことは120%聞くつもりで来てるから、なんでも言ってください。木村君は謙遜することないから」って言われました。
新庄さんからしたら、僕に気を遣わせてしまうと、100%の力を引き出せなくなって、教わりに来る意味がなくなってしまうと言うんです。すごいなあ、人から教わったり習ったりするときは、ここまでやっていいんだなって、ものすごく貴重なことを教えていただきました。
新保 成績も残し、ビッグになる人というのは、こういう謙虚な面も持っていらっしゃるというのがよくわかりますね! 実際、新庄さんにはどんなことを教えたのでしょうか?
木村 10月11月の2か月で、22回のセッションをさせていただきました。具体的には序盤・中盤・終盤と3ステージありました。序盤は「こういうアプローチでやっていくと、体の使い方がうまくいく」など、いろんな選手にやっている方法を僕から伝えていきました。
新庄さんは「ああ、新しいなあ」「おお、新しいなあ」と言いながら、取り組んでいました。新庄さんが本当にすごいなと思ったところは、わからないところは「キムくん、ちょっとお手本やってみて」って、実際に僕がやるお手本を、新庄さんがマジマジと観察する時間を躊躇なく作るところでした。
中盤は、新庄さんご自身の感覚に、新しい取り組みのスウィングを合わせていく時期でした。このころは、阪神時代、メジャー時代、日ハム時代の良かったバッティングの映像をお互いに何度も見て、新庄さんのバッティング感覚をたくさん教えていただきました。僕は新庄さんの「パワーポジション」と照らし合わせて、なぜ新庄さんはこのスウィングがいい感覚なのかを理解していきました。
新保 『パワーポジション』というのは、木村トレーナーがこれまでの経験から編み出した、人によって違う、最も力の出せる手や肘など、体の各所の角度のことですね?
木村 そうです。新庄さんが「じゃあ、オレのモノマネやってみて」って言って、僕がモノマネするのを(新庄さんが)見るんです。「もう一回」「低めのときはどうなってるの?」っていう感じで。それを見て、イメージがわいたところで、室内練習場に移動して、マシンで打つ。
うまくいくところ、いかないところをまた持ってくる。「低めはイメージできたけど、高めやねぇ」と、感覚を合わせる練習を進めていきました。本人が感覚としてわかるまで、何回もいろんな角度から繰り返す。ちゃんとできているかどうかを確認する時間を必ず取りました。頭も体も理解できるまで丁寧に進めていて、すごいと思いました。