心も体も常に緊張状態にある現代人の多くは、ふだんの呼吸がとても浅く、速くなっています。それが原因でさまざまな不調を引き起こしている可能性があります。メジャーリーグなど世界トップクラスのアスリートのトレーナーを務める森本貴義氏によると、正しい呼吸を身につけると、スポーツの上達だけではなく、姿勢がよくなる、集中力が増す、疲れにくくなる、肩こりが治る、安眠できる、などの効果があると言います。
※本記事は、森本貴義:著『入門!「全集中」の呼吸法 -自宅ですぐ始められる最強エクササイズ-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
自分の呼吸状態をチェックしよう
まず自分自身の現在の呼吸状態をチェックしてみましょう。人間ドックなどで定期的に検査をして疾患を早期発見することも大切ですが、肺機能の数値に「日常的にどんな呼吸法になっているか」「どんな姿勢で呼吸をしているか」は表れません。まずはここで紹介する4つのチェックをしてみてください。
まずは日常的な呼吸チェックです。ひとつでも思い当たることがあれば呼吸機能が低下している可能性あり! 肺機能検査で「異常がない」とされた場合でも、次の項目に覚えがある場合には、呼吸機能がじゅうぶんではないと考えられます。
1.日常的な呼吸のCHECK
2.呼吸量のCHECK
つづいて「呼吸量」をチェックします。「呼吸量は多いほうがいい」「呼吸量が多いと酸素がたくさん入ってくる」と考えるのは大きな間違いです。「呼吸量が多い」とは「ゼエゼエハアハア」という状態のことで、酸素がじゅうぶん取り込めていないために起こります。
○10秒未満
呼吸量が非常に多く、酸素供給が適切にできていない可能性が高いと考えられます
○10~20秒未満
呼吸量が多く、軽い運動や精神的なストレスで息切れや疲労が見られる可能性が高いと考えられます
○20~40秒未満
呼吸量は問題ありませんが、理想的とはいえません
○40秒以上
理想的呼吸量です。脳と体にじゅうぶんな酸素供給ができているため、運動後も息切れが少なく、精神的ストレスで呼吸が乱れることも少ないはずです
3.息止めの限界をCHECK
○35秒未満
呼吸機能が低下しています
○35~60秒未満
呼吸機能は正常範囲内ですが理想的とはいえません
○60秒以上
呼吸機能は理想的なスコアです
4.安静時の呼吸状態をCHECK
「腹式呼吸でお腹が膨らめばいい」と思っている人が多いのですが、これも間違い。正しい呼吸とは、息を吸ったときにお腹が前に突き出る状態ではなく、胴体全体が360度膨らむ状態です。横隔膜、胸郭が正しく動いていればお腹周りは全方位に膨らみます。
○吸ったときお腹が前方(天井の方向)にだけはっきりと膨らむ
腹筋の働きが弱くなっていて、息を吸ったときにかかる圧力が体の前方向に逃げてしまっている状態です。体幹も不安定になっているはずです
○吸ったときお腹が凹む
横隔膜、胸郭が正しく動いていないため、首や肩を使って緊張した呼吸をしています。肩こりや首の痛みも出やすい状態です
○吸ったときお腹が横向きにはっきりと膨らむ
横隔膜、胸郭が正しく動き、胴体の前後左右にしっかりと空気を取り込めている状態です