“冬”しか知らなかったメンバーが体感した陽気な浪江

実を言うと、これに先立って、僕はちょっとフライング気味に行動を起こそうとしていた。3月13日に同じく浪江町役場駐車場で開催される予定だった「第4回定期大会」に行こうとしていたのだ。

とはいえ、NewsCrunchの編集サイドからは、まだGOサインは出ていなかった。まだZeppも終わっていなかったのだから、当たり前といえば当たり前なのだが、なんとなくこの公演を見ておかないと、のちのち後悔するような予感がしてならなかったのだ。

掲載する媒体も決まらぬまま取材申請をするのも心苦しかったが、とりあえず手続きを済ませて、当日の朝、上野駅から特急で浪江に向かう……まさに改札口をくぐろうとした、その瞬間、スマホが鳴った。「今日の公演、荒天のため中止になりました」という緊急連絡。列車が発車する10分前のことだった。

新型コロナウイルス感染拡大予防のため、野外会場での開催に切り替えたことが仇となってしまった。東京でもかなりの強風が吹いていたが「現地では風も雨も激しく、やむなく中止を決定した」とのこと。ただし「すでにメンバーは現地に向かっており、なんらかの形で配信ライブを行なうので、むしろ、配信で見ていただいたほうが……」という話だった。

こういうことがあると「縁がないのかなぁ〜」と思ってしまいがちだが、1か月経っても「取材をしたい」という気持ちに揺るぎはなかった。これも結果論だが、3月の時点では愛来の欠席が発表されていて、さらに高井千帆も昨年に側弯症の手術を受けていて、そのリハビリ中のためパフォーマンスにはかなり制限がかかっていた。それが4月になって状況が好転し、全員揃ってステージに立ち、高井千帆も全力でパフォーマンスができるようになった。

整った! 天気にも恵まれて、もはやなんの心配もいらない。朝8時発の特急ひたちに飛び乗って、浪江へと向かった。空は青く晴れ、穏やかな春の日。いや、ステージで踊るメンバーにとっては暑いぐらいの陽気だったが、メンバーの表情はみんな明るい。

「だって、こんなに暖かい浪江に来るのは初めてだから!」

たしかに2019年11月に結成され、2020年2月をもって定期大会が中断しているので、彼女たちは「冬の浪江」しか知らない。だから季節はずれの暑さすら、まるで春と初夏をいっぺんに楽しめたような感覚でうれしかったようだ。

アメフラっシの4人は、自分たちのライブのときとはちょっと雰囲気が違う。「浪江女子発組合」は曲調も衣装も、いつものアメフラっシとはいささか異なるから当たり前なのだが、愛来はいい感じで肩の力が抜けているように見えるし、市川優月にいたっては「おしとやか」さすら感じさせる。

そのあたりを以前、市川優月に確認したところ「浪江の人には、私のキャラクターがまだバレていないから、おしとやかに見せることができるかなって(笑)。それとやっぱり同じステージにあーりんさんがいるだけで気持ちは違いますよ!」と答えてくれた。

▲浪江では「おしとやか」を意識している市川優月も現場で確認してほしい