2020年のアメリカ大統領選挙を振り返ってみると、健全な民主主義国家の選挙だったと言えるのだろうか。元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏と前ロンドン支局長の岡部伸氏が、近現代史やインテリジェンスを交え真実の世界の姿を炙り出す。

※本記事は、馬渕睦夫×岡部伸:著『新・日英同盟と脱中国 新たな希望』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

2020年アメリカ大統領選挙は世界史的な大事件

馬渕 2020年のアメリカ大統領選挙を、世界史的な視野で振り返ってみた場合、私は大きなポイントがいくつかあると思っています。

1つ目のポイントは、ロシア革命との類似点です。

▲革命殉教者の記念碑 出典:PIXTA

ロシア革命はご存じの通り、1917年にロシア帝国を崩壊に導いた革命で、少数派のボリシェヴィキ(ウラジーミル・レーニンが率いたソビエト共産党の前身)が、当時の政権(アレクサンドル・ケレンスキーを首班とする臨時政府)を武力で倒したクーデターです。今回のアメリカの大統領選で行われていたことは、それと同じなんですね。

つまり、本来なら選挙で大敗していたはずの少数派のバイデン陣営が、不正選挙という手段を使って、合法的で正当なトランプ政権を潰したというわけです。

トランプは前々から、自らの勝利を確信していながらも、最後は「法廷闘争になるだろう」と明言していました。大規模な不正が行われることを、あらかじめ見越していたのです。

▲ドナルド・トランプ前大統領 出典:ウィキメディア・コモンズ

岡部 トランプ陣営にとって痛かったのはやはり郵便投票でした。一夜にして、ウィスコンシン州とミシガン州のバイデン票が、数十万単位で増えましたからね。

馬渕 常識的に考えてあり得ないですよ。一方、フロリダ州の郵便投票は11月3日までに開票集計したので、数字を上乗せすることはできなかった。いわゆる激戦州の郵便投票が、なぜ「不正」なのかといえば、3日以降の投票まで認めているためです。しかも、消印や署名が無くても票として認定されています。

そうすると、たとえばミシガン州でトランプが30万票の差をつけていたら、3日以降、30万強を郵便投票で上乗せすればいいことになります。トランプ票の動きを見ながら、民主党側が勝つための不法上乗せに動いたのです。しかも、郵便投票にトランプの名前がまったくなくて、投票用紙の一束すべてがバイデンの名前なんてことがあり得るでしょうか。魔訶不思議としか言いようがありません。

岡部 そもそもルールづくりが杜撰でした。死亡者や引っ越しで住民不在の家庭にまで、投票用紙が届いていたと聞いています。しかも、本人確認の方法も曖昧でした。郵便投票は不正のリスクがあると、ずっと言われていましたが、民主党側からすると、郵便投票をしなければ選挙に勝てないのはわかっていたのではないでしょうか。

馬渕 だからこそ、民主党寄りの大手メディアが一丸となって、郵便投票を推し進めたのです。

岡部 それを後押ししたのが、新型コロナウイルスの流行ですよね。トランプ陣営は、不正の温床になるとわかっていながらも、今回ばかりは郵便投票の拡大を認めざるを得ませんでした。何よりトランプ自身が新型コロナに感染したから、郵便投票の流れを押しとどめることができなかった。その時点で、トランプの再選に黄信号が灯ったわけです。

▲ジョー・バイデン現大統領 出典:ウィキメディア・コモンズ