家から近すぎて行っていなかった名所は意外と多いかも。そんなスポットに改めて狙いを定めてみると、身近であるがゆえの感動が得られるだろう。「ご近所 半日旅」にハマっている人気旅行作家の吉田友和氏に、“究極の近場旅”の魅力や愉しみ方を語ってもらった。

※本記事は、吉田友和:​著『ご近所 半日旅 -いちばん気軽な「新しい旅」のスタイル-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

知っているけど行ったことのない地元の名所へ

知らない道を通ったり、知らない場所へ行ってみよう、というのが「ご近所 半日旅」。

では、逆に知っているところだとどうか。存在自体は認識していても、行ったことはないという場所もあるだろう。あえてそういうスポットへ足を運んでみるのも面白い。

私の話になるが、ひとつ例を挙げたい。

この前、東京の世田谷区にある「世田谷城址公園」を訪れた。その名の通り、戦国時代の「お城」の跡である。私は東京都世田谷区にかれこれ20年以上も住んでいるのだが、いまさらながら初めての訪問である。存在自体は前から知っていたものの、なかなか訪れる機会がなかった。

いや、機会がなかった、というのは正しくないか。行こうと思えば、すぐにでも行ける距離なのだ。単に興味が湧かなかっただけだろう。

城巡りは自分の旅のなかでも、わりと定番のテーマで、全国各地の名城を見て歩いているつもりだが、一方で地元のお城を完全にスルーしてしまっていた。これぞまさに、灯台もと暗しである。

世田谷のような住宅街に、お城のようなものがあること自体に驚かされるが、行ってみてビックリした。これが、なかなかいいところだったのだ。

お城といっても、それと知らないと単なる公園の一種にしか見えない。天守や櫓(やぐら)といった派手な建築物はないし、せいぜい空堀や土塁が残る程度である。

それでも、そこそこ広い敷地面積を持ち、適度に起伏があって、緑にあふれる空間というだけで非日常感を味わえたりする。住宅街のなかにあるからこそ、そのありがたみが大きくなるのだとも思った。

お城のすぐそばには「豪徳寺」という有名なお寺がある。こちらも行ったことがなく、ついでに立ち寄ってみたのだが、彦根藩主の井伊家の菩提寺だそうで、観光意欲を駆り立てられるスポットだった。招き猫の発祥の地ともされ、境内には招き猫が多数祀られていたのも印象的だ。

家から近すぎて行っていなかった名所――そういうスポットに改めて狙いを定めてみると、身近であるがゆえの感動が得られるだろう。

▲知っているけど行ったことのない地元の名所へ イメージ:PIXTA

「旅人目線」で歩くと新たな名所に気づきやすい

旅に出て、どこか見知らぬ街へ訪れたとき、フトこんなことを考える。

「この街の人たちは、どんな暮らしをしているのだろう」

旅人である自分からすれば、そこは「異国」である一方で、現地で生まれ育った人にとっては「生活の場」に過ぎない。立場の違いで見える景色が変わってくるわけだ。

ご近所半日旅に臨むにあたっては、この立場を逆転させてみるとわかりやすい。自分にとっては親しみ深い地元の風景も、余所から来た人にはきっと目新しいものとして映る。

そういう旅人の目線で改めて見てみると、我が町にも意外と名所があるのだと気がつく。その際、名所の探し方自体はいつもの旅行を踏襲すればいい。

▲「旅人目線」で歩くと新たな名所に気づきやすい イメージ:PIXTA

グーグルマップを使うならば、ここではキーワードでの検索を行う。オススメは自宅周辺を表示させたうえで、スポットのジャンル名を入力する方法だ。

たとえば「美術館」あるいは「博物館」と入れてみよう。すると、思いのほか多くの検索結果が表示されたりする。もちろん、場所によっても差はあるだろうが、私が住む世田谷区近辺に限っていえば、10軒以上は出てくる。

知っている場所もあれば、初めて見る名前もある。都営の大きな施設から、個人経営の小さなアトリエのようなところまでさまざまだ。

気になったスポットのクチコミをチェックしてみると、なかには遠方から訪れていると思しき書き込みが散見されたりして興味深い。これぞまさに、旅人と生活者という立場の違いを意識させられる瞬間だ。

自分が住んでいる地域の施設へ、わざわざ足を運んでいる人がいる――その事実が誇らしいし、それほど有名なスポットがあるのなら、住人としては一度は見ておきたいなぁと思えてくる。ご近所半日旅のきっかけになるのだ。

「美術館」「博物館」は一例なので、もちろんほかのキーワードでもいい。たとえば「古墳」「温泉」「テーマパーク」など。田舎にしかなさそうなものを、あえて都市部で探してみると、意外な発見が得られるかもしれない。

また、施設のジャンル名ではなく、旅の目的を入力してみるのもおもしろい。私がよく調べるのは「散歩」「社会科見学」「ピクニック」など。それらが実行できるスポットが表示されるので便利だ。