「小池ブーム」から約4年。この間の都政に対して、都民の審判が下る東京都議会選挙がまもなく投開票を迎える。"小池氏らしさ"が前面に出ている「都民ファーストの会」について、前都知事である舛添要一氏がその問題点を語る。
第一党が「素人集団」 異常な都議会の現在
長期間に渡って続いてきた緊急事態宣言が明け、東京都では間もなく東京都議会選挙が始まります(6月25日告示、7月4日投開票)。
未だ予断を許さない新型コロナウイルスの感染拡大状況ですが、昨年の2月ごろからここまで長引いてしまった理由のひとつに、現都知事である小池百合子氏の無策が挙げられることは、拙著『東京終了』(ワニブックスPULS新書)をはじめ、すでにさまざまなメディアで指摘してきました。
そして、その無策ぶりを容認してきたのは、小池氏が創設した「都民ファーストの会」です。今回は、この「都民ファーストの会」と小池都政についてお話ししていこうと思います。
まず、もしかすると「都民ファーストの会って、まだあったの?」と思われた人もおられるかもしれません。まだ存在するどころか、2021年6月現在でも東京都議会では与党第一党であり、小池氏お得意の中身のない「パフォーマンス」を追認するだけの集団と化しています。
そうなってしまう理由は大きく分けて2つあり、ひとつは彼らのうち大半は約4年前の「小池ブーム」に乗っかる形で当選しただけの「素人議員」であること。そしてもうひとつは、都民ファーストの会では小池氏に対して意見をするといった「言論の自由」が許されていないことです。実際、後者を理由に同党を離れた都議は少なくありません。
それでは、実際の都民ファーストの会の「活動実績」はどうでしょうか。同党所属議員のブログを見ると、これまで377個の公約を進め、うち367個が実現または決定したと記されています。
これらすべてを点検したわけではありませんが、ひとつ言えるのは、主な公約として掲げている待機児童対策や無電柱化対策などは、私の都知事時代から進めているものであり「都民ファーストの会」が打ち出したものではないということ。つまり、新しい政党でありながら目新しい政策はほとんど打ち出しておらず、確固たる信念を持っているとはいえない集団なのです。
逆に言えば、支持率最優先で方針をコロコロ変える小池氏らしい政党というところでしょうか。
公明党の協力が得られず実力不足が露呈する可能性
こうしたなか、間もなく行われる今年の都議選で状況が大きく変わる可能性は高いです。なぜなら、4年前は自民党と決別して都民ファーストの会と手を組んだ公明党が、今回は再び自民党と協力することとなったからです。
都民ファーストの会は、都議会の第1党ではありますが、公明党所属議員と数を合わせなければ過半数に届きません。また、選挙時においても、強力な支持母体を持つ公明党の協力を得られないとなると、支持基盤の弱い議員の多い都民ファーストの会は、実力不足に直面することとなるでしょう。
一方、公明党はなぜ自民党と“より”を戻すことになったのでしょうか。2017年のときもそうでしたが、都議会選挙はのちに行われる衆議院議員総選挙の結果を占う、いわば「リトマス試験紙」のような位置付けでもあります。
5月末に読売新聞が行なった世論調査では、支持率トップが自民党、2位が都民ファーストの会だったものの、その差は大きく開いていました。そのため、公明党としては今回の都議会選で都民ファーストの会と組んでも大勝する可能性は低く、政権与党として手を組む自民党との関係が総選挙のときにギクシャクするだけとなり、何もメリットがないのです。
良い悪いはともかく、以前から公明党はこうした「世論の流れを読む力」のようなものには長けています。