たっぷりそいだ中落ちは“酒泥棒”に!
見てください、この立派なドヤ顔を。
ちなみに、なぜこんなに手際がいいかというと、You Tubeで「ブリの捌き方」と検索して、動画を見ながらマネしていたからです。
いくつか動画を見たんですが、教え方がうまい人はやっぱり再生回数が多く、ひとつの物差しではあるとわかってはいるものの、数字というのは正直だよなと思うのです。
お腹と背中、そして中骨に分けたら、今度は皮を引きます。
ブリの皮を引っ張りながら、皮と身の間に包丁を入れていきます。ここでも改めて思うのは、包丁を研いでおいてよかった。
すすっと身が離れていくのがわかります。新鮮なブリは身がぷりぷり。手に持つとその弾力がよくわかります。
ほら、ブリの刺身らしくなったでしょう。
こちらは背中ですね。ブリの刺身は、腹身と呼ばれるお腹の方が、脂が多くこってりしていて、背中は比較的引き締まっています。どちらもおいしい。でも、私は背中の方が好みなので、こちらはお刺身でいただきたいと思います。
というわけで、こちらが背中の刺身。見た目があまり良くないのはご容赦ください。
包丁を入れるのは自分なので、どんな厚さで切ってもいい。これってなんて幸せなことなんでしょう。食べやすさを考慮して「ちょっと厚め」くらいにしてしまう自分が情けない。
いやあ、それにしてもキレイなお刺身を目の前にすると「ご馳走だ」と思ってしまいますよね。日本酒もいいけど、白いご飯もいいなってね。
中骨についた身は、スプーンで落として、別の料理に使います。スキルがない私がおろしたブリは、中骨にも身がしっかりとついています。そんなわけで、じゃんじゃん身がとれる。
この作業はとても楽しいので、うちの子どもにやらせてあげたら喜ぶかな、と思って声をかけたんですが「漫画を読んでて忙しい」っていう。なんだその態度は。
怒ろうにも手に包丁を持っている私が激昂すると、ちょっと洒落にならない様相なので、ここはグッと堪えて、調理を仕上げることにします。
そいだ身でできたのがブリのなめろうです。味噌と一緒に身を叩いて、大葉・みょうが・ねぎ・砂糖と一緒に合わせました。これが絶品でした。これに合わせるのはやはり日本酒なのかなあ。ちびちび食べても、あっという間になくなることでしょう。
カマは、煮付けにしましょう。大きな鍋に酒・砂糖・醤油と生姜をひとかけ入れたら、ぐつぐつと煮込むだけ。20分ほど煮たら完成です。
さて、脂が強い腹身はどうやって食べようかと考えたとき、ふと頭に浮かんだのは、友だちの家でいただいたブリしゃぶでした。それはなんと、クレソンと一緒にしゃぶしゃぶするんです。
「おしゃれな見た目の料理は、たいしておいしくない」と思っていたそれまでの自分をグーで殴りたいくらい、これが本当においしかったんです。たかちゃん、あの日はありがとう。そんなわけで、あの日の追憶ということで、クレソンとパクチーを用意します。青菜を昆布だしのなかで合わせて、そこにブリを潜らせて野菜と一緒にいただきます。
ちなみに、右に見えているのが先ほどの煮付けです。お皿に盛るときに、崩れてしまったので、見た目は悪いですが、味はバッチリでした。
お湯がぐつぐつしたら、ブリを熱湯に潜らせます。しゃぶしゃぶしゃぶ。3回ほど泳がせたら、青菜と一緒に箸で取って、手元のポン酢にあわせていただきます。
いやあ、これが本当にうまいんです。ブリに熱が入ることによって、甘さが際立ち、クセのある青菜たちと抜群のコンビネーションを見せます。さっぱり味のポン酢をまとわせることで、オーケストラのようなハーモニーを奏でるんです。なんてうまいんだろう。酒を飲むのを忘れてしまうくらいのおいしさ。これって、私にとって最上の褒め言葉かも。
とか言いつつ、先ほどからしっかりとお酒を飲んでることも告白させてください。
少しあまったお刺身は、中骨でとった出汁とあわせてカレーを作りました。スパイスはイエローマスタードシードとクローブを中心に、トマトを合わせて爽やかさを意識した仕上がりに。
フィッシュカレーって、あまり馴染みないかもしれませんがおいしいんですよ。ご飯はもちろんお酒にもよく合いますので、よかったら試してください。スパイスと玉ねぎを油で炒めて、カレー粉・トマト缶・塩・魚の切り身を入れ煮込むだけで完成です。
ああ、楽しいしおいしかった。
新鮮なブリは決して安くはありません。労は多いし、部屋も臭くなった、ゴミもたくさん出る。でも、これぞ成熟した大人の遊びだという気がしたんです。
コスパという言葉が私は嫌いなんですが、世の中にはそれを超越した喜びがあるんですよ。絶対にまたやろう。その時は皆さん遊びに来てくださいね。
というわけで、次回、次回こそは、外に飲みにいきます。