大きいゆらぎより小さいゆらぎをたくさん起こしたい

▲ご当地キャラクター「からいもくん」と「グランパワーヒノクニ」も登場、会場は大いに沸いた

漫才・歌・企画と盛りだくさんの公演は、約1時間であっという間に終わってしまったが、濃密な内容だけに満足度はかなりのもの。ちなみに、この日は熊本在住のりんたろー。のご両親も客席で鑑賞していた。こんなにも場内を盛り上げ、地域の人々に笑顔の花を咲かせた息子の姿は、さぞ誇らしかったことだろう。

終演後、さいわいにもEXITの2人に話を聞くことができた。兼近は2019年に、5000人を集めて大成功したパシフィコ横浜公演のあとに、この小規模なツアーを思いついたきっかけをこう話す。

「でかい場所では1回やってるんで、もう一度やっても同じようなものになってしまう。それだったら、普段ライブを見れないような人たち……子育てや介護で遠くに行けないとか、体が悪かったり、家庭環境や経済的な事情があったりする人たちの所に、僕たちから出向いて『近くに来るんだ』って夢を与えたかった。今、特に遠くに行けない時期だし、そんなときにチャラい奴が地元に来たら、ちょっと楽しいよねって発想です。そうすることで自分の町が好きになるし、そこから日常がまた好きになってくれたら……そういうカッコいい理由で決めました(照)」

最後は照れていたが、社会的な意義も大きいツアーをすることによって、兼近が普段から言っている「ゆらぎを起こしたい」という希望はたしかに実現したと思う。本人も「大きな場所で大きいゆらぎを起こすよりも、いろんな場所で小さいゆらぎを起こした方が、いろんな広がり方をすると思うんですよね」と語るように、このツアーの本質はそこにあるのだと思う。

りんたろー。はコロナ禍によって、最初に思い描いた形よりも制限があるなかでツアーをやらざるを得なかった状況を踏まえて話してくれた。

「本当は県外からもバンバン来て欲しかったんですけど、こうなってしまった以上、そうも言ってられないんで。そんななかでも声をかけてくれる自治体さんがいるってことがわかりましたし、その気持ちを無下にはできないなって思ったんです。中止することは簡単だし、正直、いまの状況ではそれがいちばん安全策だったかもしれない。でも、そのなかでもできる方法を模索するっていうことが大事で『こういう状況でも、まだやれることあるよね』って思ってくださったらうれしい」

人から受け取った気持ちに全力で応えるのがEXITの真骨頂なのだ。

会場を出ると30人程のファンが、EXITに最後の挨拶をするために出口で待ち構えていた。そんなファンたちに、りんたろー。はみんなに会釈、兼近は手を振って応える。

▲出待ちのファンに手を振る兼近

空港に向かうタクシーの中で、その光景を見ていた運転手さんが「私は若い人のことはよくわからないけど、こんな田舎に来てくれて町を活性化させてくれるのはありがたいです。外で待ってる人たちが、みんないい顔しててうれしくなったよ」と話してくれた。

帰りの飛行機は偶然、チームEXITと同じ便だったのだが、機内に乗り込み席に着いたタイミングで、スマホにりんたろー。からのTwitter通知が入ってきた。間もなく始まるバドミントンの桃田賢斗選手と共演した特番を見てね、という告知だったのだが、あれだけテレビに出ていているのに、自分の出演番組の放送日や時間を把握しているのもすごいし、ましてや弾丸ツアーで疲れているはずの今、自分で情報を発信する姿勢には心から頭が下がった。

各所で喜びの種を蒔きまくって終了した熊本大津町公演だが、全国ツアーはまだ始まったばかり。EXITの地域活性の旅はまだまだ続く。

▲ロビーには兼近と仲がいいゆめっち(3時のヒロイン:熊本出身)のご家族からの花も飾られていた

 ※今回の取材は感染対策を徹底したうえで行いました。

▲あなたの街にチャラ男を呼びませんかSP