いつもの自分が出せないのは不安と緊張のせい
明日、初対面の人に会わなければならないというだけで、前の日から非常な不安と緊張を覚える人がいます。自分は明日、緊張する場面に身をさらさねばならない。それを想像して不安になってしまうのです。
大事な面接があるとか、重要な会議でプレゼンしなければならない、などというときも同様の不安に襲われる人がいるでしょう。
他人との直接の関わりをすることで不安が生じて、いつもの自分と違う反応をしてしまうのは、エクスポージャー不安によるものです。
初対面の人に会うなど緊張する場面に身をさらしているとき、体の感覚の異常が生じたり、理解力の低下が起きたりすることがあります。
人間とはおかしなもので、初めての相手にお愛想でも言うべきところなのに、あまのじゃくな反応をして嫌味を言ってしまうようなことさえあります。
不安への耐性治療は専門的な指導が必要
エクスポージャーとは、日本語では「曝露(ばくろ)する」という意味で、過剰な刺激に身をさらすという意味合いがあります。極度の緊張にさらされ、不安のあまりおかしくなってしまうわけです。一般の人にもよく見られますが、アスペルガーの人はこれが極端に出やすいということがあります。
こうした不安への治療法にエクスポージャー療法というものがあります。不安が起こる状況への耐性を作るために、あえてつらい刺激に身をさらして慣れさせていくという治療法で、これには大きく二つの方法があります。(※実際の治療には専門的な指導が必要ですが、参考にはなるので挙げておきます)
一つは、不安が起きる場面を思い浮かべる「想像エクスポージャー」という方法。不安を感じた状況や場面そのものを思い描いて、言葉で表現します。人前で表現しながら、そのイメージに慣れるようにします。言葉にしたものを録音して繰り返し聞くというのもあります。
もう一つは、実際にその場面や状況に身を置く「現実エクスポージャー」という方法です。大勢の人の前に出たり、プレゼン会場へ行くなどして、緊張する場面に身をさらし、その場の不安に心身を慣れさせます。
エクスポージャー療法は非常に刺激の強い治療法で安易にはできませんが、とくにPTSD(心的外傷後ストレス障がい)には治療効果が顕著だと言われています。
名前を覚えることがコミュニケーションの始まり
コミュニケーションでのちょっとした問題として、とくにアスペルガー傾向のある人は「人の名前を覚えられない」ということがあります。そもそも相手の名前を覚えようとしない人もいます。
しかし、名前を覚えるのはコミュニケーションの第一歩なのです。
「どうもお久しぶりです」と挨拶されても、その人の名前が出てこない。それでは相手は「自分が軽んじられている」ように感じてしまいます。顔と名前がすぐ一致して出てくるようにするには、一つの方法として、頂いた名刺にメモを残しておくという手があります。
別れたあとすぐに、名刺にその人の顔の特徴や会った場所と日時、どんな話をしたかなどをメモしておくのです。簡単な似顔絵でも付ければなおベターです。こうしておくと、あとで見返すこともできるし、書くという作業をすることで記憶の強化ができます。その人の名前と顔が脳に強く印象付けられるのです。