お取り寄せなどで自宅でも楽しめるようになった「地ビール」。クラフトビールとも呼ばれますが、規制が緩和されたことで生み出されたという背景があります。ビールひとつとっても、日本の法改正の歴史が見えてくると、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は語ります。
※本記事は、渡瀬裕哉:著『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ――令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
地ビールが規制改革の成功と言われる理由とは?
新規参入企業やベンチャーの人たちは、多くの規制の壁と対峙(たいじ)することになります。この壁をなんとかしたいと思う事業者は多く、これまでになかったものを多くの人に届けたいという熱意が実った例をご紹介します。
地ビールです。
日本の地ビール協会を中心に、平成11年(1999)に「地ビールの日」を定めました。毎年4月23日です。日本は全国各地に地ビールがあります。これは、酒類に関する規制が改革された結果、生まれたものです。
そもそもビールとは、どういう飲み物でしょうか。これを定義したのが、1516年4月23日に施行された「ビール純粋令」です。この日はドイツでも「ビールの日」となっています。
ビール純粋令は、当時のバイエルン公国のヴィルヘルム四世によって発布された法律です。この背景には、いろいろな原料を使った質の悪いビールが横行していた事情があり、王様がビール醸造所や販売について細かく規定しました。
むしろ、これは規制強化の日なのですが、現在のビールに使われている材料と同じ、大麦とホップ、水以外の原料を使ってはいけないと規定されたのがこのときです。
ビール製造大手・キリンビールの調査によれば、2019年の世界ビール消費量は、1億8905万4000㎘。新型コロナウイルス感染症が世界中で流行した2020年以降は1割ほど減る見通しですが、それでも相当な量のビールが世界中で消費されています。
もっともビールが消費されている国は、人口の多い中国で、17年連続で消費量国別ランキング1位です。中国は経済成長もしているので、需要が伸び続けています。
ビールは嗜好(しこう)品ですから、人口に対して消費する人の割合は限られますが、経済成長することでお金を持っている人が増え、日常生活のなかでお酒を飲める人が増えたことになります。消費量ランキング2位はアメリカ、3位がブラジルです。ちなみに日本は、このランキングでは7位です。一人当たりの消費量が多いのは、ドイツと思いきやチェコが1位、ドイツは3位です。