マスコミから大注目された「防大女子一期生」
1992年、女子の一期生39名が入校した(通算では四十期)。
入校に当たっては、女子学生の入校者数を無制限にするか、ある程度の枠を設けるかという議論もされたようだ。
「女子学生受け入れは男女差別の撤廃を前提にしており、受け入れを認めながら採用の枠を設けることは、新たに差別を生むという非難を受けるおそれがある」という考えかたから、採用枠を定めることは適当ではないという意見もあったという。
防大に女子が入校するということで、入校式にはマスコミも多く集まり、彼女たちの門出を報じた。なかには、通っていた大学をやめてまで入校した者もいた。
「新入生にとって、とくに本年度初めて入校する女子学生諸君にとって精神的、肉体的な負担も大きいと思う。しかし、こうした体験は、将来、多くの部下を指揮統率する幹部自衛官として不可欠の資質を養成するうえで極めて大切。みずからの実践を通じて士官候補生にふさわしい容儀・態度の持ち主になってほしい」
当時の夏目晴雄学校長は、このように式典でエールを送った。
さて、女子一期生は「とても美人か、そうでなければ、とても優秀かのどちらか」と評されることが多かったという。真偽のほどは定かではないが、学生のあいだでは「マスコミから注目されることがわかっていたので、あえてそういう人間を集めた」と囁かれていたそうだ。
たしかに、女性初のイージス艦艦長となった海上自衛官は防大女子一期生であり、艦長就任時に「美しい」と評判になっている。
当初、女子の制服は「男子学生に埋没させることのないよう、男子学生と異なるものとする」という方針により、女子学生独自の制服を新たに制定。
2004年の改正で、2006年からはスカートとズボンといった違いはある(男子はズボン二着が貸与されるのに対し、女子にはズボンとスカートが一着ずつ貸与される)ものの、男子学生の制服と同じものとなった。
ちなみに、2007年に入校した私の期までは昔の制服が貸与されており、男子の冬服よりやや明るい紺色の制服は「女性警察官」、茶灰色の夏服は「サファリパーク」と陰で呼ばれていた。
また“女子ならでは”の生活指導基準として、化粧は華美にならない程度、香水は周囲に不快感を与えない程度、マニュキュアをする場合には無色透明等、清楚な感じを与えるもの、ストッキングは官給品またはそれに類似したもの(肌色無色)とし、伝線には特に注意を要する、女子トイレのない場所では男子トイレを使用してもよい、などといった点が定められた。