多様な挑戦をしている日本のメーカー

加藤 例えば、ヨーロッパでも「EV化だ!」と言われていますけど、EVじゃなくてe-fuelをどうやって開発しようか、というところに目が向いているメーカーもいるわけですね。

池田 要するに、いま考えなきゃいけないのは「1つのことをやっておけばダイジョブだ!!」という“短絡思考”ではありません。

例えば、ダイエットするのに「あなた、リンゴだけ食べていれば痩せますよ」みたいなのって、だいたい嘘じゃないですか。そうじゃなくてバランスよく全てのことをやらないと成功しないんですよね、何事も。

岡崎 さすが、ダイエットの話なら池田さん(笑)。

池田 お任せください(笑)。「日本のメーカーはEV開発に出遅れた」とか「ハイブリッドにいつまでも固執しているからガラパゴス化するんだ」とかメディアは言っていますが、日本のメーカーは世界で一番多様なトライアルをしています。それは決してガラパゴスでもなんでもないんです。

例えば、プジョー(フランス)はステランティスっていうグループの傘下にいますが、VWに次いでヨーロッパで2番目の大きな自動車メーカーです。

そのプジョーのジャン・フィリップ・アンパラトさん(当時CEO)が2019年に来日したとき、僕はインタビューしたんですけど、この方が仰っていたのも「EV一本化なんてしないよ、それより何を選んで買うかは、この自由経済のなかではお客さまだ。お客さまがキングなんだ」と。

「だから、お客さまが今のその地域の規制であるとか、コストであるとか、社会的な要請であるとか、いろんなものに合わせて自由に選べるようにさまざまなシステムを作るのが、メーカーのあるべき姿勢なんだ」とハッキリ仰っていました。

加藤 いいこと言いますね。

池田 日本のメーカーがやっていることと、VWのやっていること、それからステランティスがやっていること、それらは基本的に同じなんです。

「日本はガラパゴス」だなんて、本当に「誰がどこで言い出しているデマなんですか?」って言いたいですね。

岡崎 むしろ2035年以降、エンジン車はおろかハイブリッド車の販売すら禁止にしているイギリスこそ、世界的に見たら最たるガラパゴス思考だと思いますね。米カリフォルニア州でもそういう話が出てますけど、あれは一部の政治家などがちょろっと口を滑らせてメディアにそう言っただけのことで、実際は何も決まってないっていうのが真相です。

最後に「じゃあ本当にEVだけにするの?」って記者から質問が出ると「そこは情勢を見て」みたいな、割とグレーな物言いなんですよ。

小池百合子都知事 出典:ウィキメディア・コモンズ

小池都知事「2030年までにガソリン車廃止」

加藤 なるほど。小池都知事も何か似たような発言をされていますね(笑)。

岡崎 ええ、これはもう本当にひどいです。

「2030年までにガソリン車廃止」と発言していらっしゃいますが(2020年12月8日、都議会での発言)、国が2030年半ばに廃止するんだったら東京は2030年にしようって……。「うちの方が早くてエライぞ!」っていう意図としか考えられない。だから話の中身としては、まったくもって井戸端会議レベルなんですよね。

池田 まったくお粗末な話です。だって言っていることが小学生レベルでしょ? 「俺の方が早いぞ!」っていうやつですよ。

岡崎 うん、まったくそれだね。

加藤 メーカーはたまったもんじゃないですよね。10年、20年かけて、素晴らしいエンジンを作るために、技術者たちはまさに全身全霊、人生をかけて取り組んでいるわけですよ。

一台のクルマを作るのに、本当に多くの人が関わっているわけじゃないですか。それがこういう発言で壊されてしまうことに私は本当に憤っているんです。

岡崎 その通りですね。もちろん環境問題は人類にとってとても大事なことですが、それがどうも政治家の人気取りに使われてることには虫唾が走ります。

加藤 小泉氏も小池都知事も発言が軽すぎます。働く人の顔が見えていない。

池田 人気取りということでは小池さんの方がより濃厚ですよね。それまでそういうことを考えていた節がないんですから。

岡崎 環境問題って「錦の御旗」というか、誰も反対しにくいことじゃないですか。それを人気取りに使う政治家は、これからもどんどん出てくると思いますよ。

でも、そういう動きが行きすぎたり、誤った方向に向かったりすると、国はどんどん貧しくなります。我々はそこをしっかりとチェックしていかなくてはいけません。


※『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』は、インターネット番組『EV推進の噓』(未来ネット)を元に、再編集を行ったものです(2021年1月〜6月配信。以降YouTubeで無料配信中)。