EV(電気自動車)は、まだ世の中に1%程度しか普及していない。最新技術であるにも関わらず普及が伸び悩んでいるのには、それ相応の理由が確実にある。そのような状況下で、世の中のクルマを無理矢理にでもEV100%にしたい人たちがいて、もはやそれは環境のためとは言い難く、何か裏があるのではと思わずにいられない。

EV推進で得をするのは誰か? EVで儲けようとしているのは誰か? 今、注目される新産業「EV」(電気自動車 / Electric Vehicle)をテーマに、加藤康子氏(元内閣官房参与)、池田直渡氏(自動車経済評論家)、岡崎五朗氏(モータージャーナリスト)の3名が、電気自動車と環境ビジネスの怪しい関係に切り込む!

▲電気自動車を通して見えてくる日本の産業や政治の問題点を徹底討論

※本記事は、加藤康子×池田直渡×岡崎五朗:著『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

EVを買って快適に運用するのは難しい?

岡崎 EVだけの世の中にしたら喜ぶ人がいるんだろうな、と思いますね。

加藤 そう、EVで誰が儲かるのか……ということですね。

池田 EVで誰が得をするかといえば……まずはユーザー目線で考えてみましょうか。少なくともEVって、常に充電のことを気にしなければいけないですよね。一軒家の自宅に住んでいて、夜に充電できればいいですよ。でも、そうじゃない人は、いつどこで充電するのでしょうか。 

▲充電している電気自動車 イメージ:PIXTA

加藤 充電するのにも時間がかかりますよね。急速充電器でも満充電に30分はかかるでしょう?

岡崎 出力50kW(キロワット)の急速充電器を使っても、30分で充電できるのは約25kWh(キロワットアワー)。ちょっと大きいEVだったら、せいぜい100km走行分程です。

加藤 この前、誰かが書いていましたが、東京から仙台に行くのに2~3回充電しなければ駄目だったと。でも、充電器があるところって限られているわけで、その高速充電器が使えなかったら完全にアウトじゃないですか?

岡崎 そうです。2人が充電待ちしていたら30分+30分、自分も30分で、1時間半待つことになるわけですよ。世の中にEVが増えれば増えるほど、充電待ちになる確率は高くはなるわけです。だから、ユーザーが増えれば増えるほど、EVのメリットは享受できなくなる、とも言えます。

池田 もちろん技術の進歩は加味しなきゃいけないので、今30分かかっている充電が、やがて15分になるかもしれない、充電器も増えるかもしれない、というのはあるんですけど、でもゼロにはならないわけですよね。

岡崎 ガソリンと同じように3分で入るようになるとは到底思えない。

池田 その問題を解決すべく、バッテリースワップ(交換)方式というのを開発したメーカーもあったんですけど、儲かる見込みが立てられず廃業しました。

岡崎 なので、ユーザー目線的にいうと、お金持ちであること、自宅に急速充電器を取り付けられる人であること。そうでないと、EVを買って快適に運用するのは難しいということになりますね。ちなみに、これは「誰一人取り残さない」というSDGs(エスディージーズ)の理念に反します(笑)。

岡崎 そもそも、なんでみんながこんなにEV、EVと言うんだと思います?

池田 まず1つは、EVは非常にわかりやすく見えるんですよね。話がシンプルでいい。本当は、この問題はとても複雑で、何時間お話ししても語り尽くせないほどの問題だらけなんですけど……「EV」の一言で解決した気になれる(笑)。特に政治家の皆さんですね。政治家というのは、そもそもレク(レクチャー)を1時間も2時間も聞いてくれませんから。

加藤 15分ですよ。

池田 でも、そこで「EVはエコです」と言えば、15分で説明できる、へたしたらペライチ(紙1枚)で説明できる。そうすると、実に簡単な議論になるわけですよね。そこが第一。

岡崎 まさに「EV」は魔法の言葉ですね(笑)。