「サンマの梅なめろう」は日本酒ドロボウ
注目の4番打者、太刀魚選手は期待を裏切らないおいしさでした。皮目を軽く炙ってあるから、香ばしさが最初にやってきて、そのあと、身の甘さが口の中で広がります。それをキリッとした酎ハイで流し込む。ウハー、うまい! 「この太刀魚だけで890円の価値があるね」と頷き合ったのは言うまでもありません。
そして、二遊間を固めるタコもアジも最高にうまい。こういうアテには日本酒ですよね。この店は魚が看板ということもあり、もちろん酒も充実しています。
こちらの常連さんは、50歳以上のジェントルマンが多いのですが、気がつくと皆さん日本酒を楽しんでいらっしゃる。日本酒を楽しむために、魚を頼んでいると言ってもいい。皆さんはおいしそうに酒を飲むから、見ているこちらも気持ちがいいし、私も日本酒を飲みたくなる。
ここからは、試合を彩る外野陣を紹介しましょう。
まずは、走攻守そろったマルチプレイヤー牡蠣を天ぷらにした罪な一品です。熱が入って、ぷっくらと膨らんだ牡蠣は口に入れると、じゅわっと破裂します。旨味の大洪水だけど、しっとりとした衣がそれを受け止めてくれる。牡蠣の旨味が口に広がると同時に、海苔塩も、そっと花を添える。とにかく酒が進むんです。
こちらはサンマの梅なめろう。安定感に欠けるため年間を通した主砲とはなりえない秋刀魚ですが、梅という変速打法を身につけたおかげで、一気にドラフト外から支配下に入った努力家でもあります。サンマと梅? これがうまかったんです。
口に入れると、梅の甘酸っぱさと、サンマの甘さがマッチして、なんともいえない妙味を演出しています。これをちびちびやりながら日本酒を飲んだら、1升は軽くいってしまうに違いないでしょう。飲み過ぎが良いか悪いかは置いといて、非力なサンマが最後まで試合を任せられる選手に成長したことに、私は涙を禁じ得ません。
この店は、いわゆるせんべろな店とは違います。だから、みんなしっかりと料理と酒を楽しんで帰ります。立ち飲みはスピーディーな回転が命だけど、こちらの店はちょっとだけのんびり楽しんでもいいかなって思うんです。
もちろん、それだけに酒とつまみはたくさん頼みましょう。たくさん飲んだら気分がいいのは客だけじゃない。お店だってうれしいから、きっと機嫌がよくなる。「また来てね」って言いたくもなるでしょう。飲み屋から歓迎されてこそ真の酒飲みだと私は思うんです。だから私は酒を飲む。そしたら、みんながいい気分になる。
というわけで、しこたま酔ったところで今日はおしまい。ああ、楽しかった。次はどこの街へ行こうかしら。
『立ち飲み・マイ・ラブ♡ - 痛みに負けるな!-』は、次回11/ 19(金)更新予定です。お楽しみに!!
■城喜元
住所:東京都港区新橋4-14-6 第二西欧ビル 1F
営業時間: 17:30~23:00
定休日:日・祝
電話:03-3436-4617
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