「人生を狂わされた人がたくさんいると思います」そう言って、Y美さん(40代)は大きなため息をついた。2020年9月に、Y美さんが798万円という大金を投じたのは、ジェンコとグローバリティクス・テック・リサーチ(以下GTR)という商品で、それらを運営していた玉井暁容疑者を含む男女7名が2021年11月10日に逮捕された。
「今思えば、宗教活動みたいでしたね。お話し上手な人がセミナーをして、それを聞いて信じ込まされていく。『いいことを紹介しているんだから、胸を張ってお友達に紹介してね』と教えられ、友達にも声をかけるようになって…。でも、私の話が下手だったのが幸いでした。紹介者を出さずにすんだのですから」
マッチングアプリで出会った男性から勧められ、約800万円という大金を投じた詐欺的な投資商品は、一体どのようなものなのだろうか。そして、どのように誘われ、どうして財布の紐を緩めてしまったのだろうか。
出会い系サイトに横行している詐欺師たち
先日、某SNSで筆者である私に友達申請をしてきた人がいた。大吾直樹と名乗る日系人である。もちろん見知らぬ人である。白衣を着ており、世界保健機構で働く医師だという。おそらく詐欺だろうと思い、後学のためにもと思い、やり取りをしてみた。
最初の頃にきたのは「貧しい国の人々のために献身している医師です」「幼い頃に両親を亡くし、養母に育てられ、奨学金を受けて医大に入りました」など興味を引くような身の上のメッセージ。そして「独身ですか?」「恋人はいますか?」「結婚したいですか?」などの質問。これらが何度か繰り返されたあと、LINE交換に誘ってきた。
LINEでやり取りをするようになってからは、毎日のように「おはよう」「おやすみ」の挨拶から始まるメッセージが、多い日で10通以上も送られてきた。
「私の趣味は旅行とギターです。でも最も大切にしているのは仕事です」「人々の健康のために最善を尽くしています」と自分のことを話す。それと同時に「私はあなたをこれまでにないほど愛します」「私は、あなたのような素晴らしい女性と恋に落ちたことを嬉しく思います」などの甘い言葉を囁いてくる。
そして、こちらが信用したと見計らった頃に「現金を送りたいから個人情報を教えて欲しい」というメッセージが大金の写真とともに送られてきた。
最初のメールから、個人情報を引き出すまでの期間は1ヶ月と1週間。なかなか詐欺側も手間暇をかけているのだ。
SNSや出会い系サイトでは、国際ロマンス詐欺をはじめとした詐欺が横行していると言われており、実際、毎日のようにアヤシイ外国人からメッセージが送られてくる。このような明らかにアヤシイ人物からの連絡には警戒をするが、そうではなく「友達以上恋人未満」の関係性の相手だったらどうだろうか?