効率化を求める以外方法がない欧州のビジネス環境
保守的にみえるヨーロッパですが、ビジネスでも普段の生活でも、さまざまな点で日本よりデジタル化が進行し、それが顕著なのが行政サービスです。納税や情報配布などのデジタル化の徹底度合いは、日本とは比べものになりません。
金融も進んでいる分野で、特に「Fintech」(従来の金融サービスとIT技術を組み合わせた領域)は欧州全土で展開する企業も多く、その柔軟性や利便性は驚くべきレベルです。
なぜ日本よりもアナログな国が多いヨーロッパで、デジタル化が進んでいるかというと、最大の原因は人件費の高さと労働慣習です。
ヨーロッパは雇用規制が日本よりもはるかに厳しいため、労働工数の管理に厳密な国が多く、有給も全部消化、ルーズな印象の南部でも労働時間をきっちり守るので、日本のようにダラダラと仕事をすることができません。
費用分しか仕事をしないので、収益性を高めたい場合は日本のように精神論などに頼らず、デジタル化して効率化するほかないのです。
実際にヨーロッパで経営企画や管理業務をやるとよくわかりますが、とにかく人件費が高い。その割には熱心に働かないので、いかに短時間で結果を出すかが大切で、効率化を進めるしかないのです。
お金を払っても働かないし、怒っても効果はなく、納期の遅れは当たり前。間違いも多く、間違っても気にしない。日本のような品質は期待できません。
とにかく日本式が通用しないので、管理側がうまく回る仕組みを工夫しなければなりません。そこで結局、システム化がもっともコストがかからないので進んでいきます。いちいち人を入れ替えて訓練するよりも、機械をいれてエイヤッでやってしまうのが一番確実なのです。
私が現場で観察してきた感覚では、日本でDXが進みにくい理由は、欧州のような環境がないがために効率化や付加価値の増加という動機が薄いからだと言えます。
日本の場合は「DX」というと、すぐに技術やトレンドの話になりがちで、バズワードの言葉遊びで終わってしまうのですが、ポイントはそこではなく、もっと根源的なものなのです。